サイバー空間の権力論

2015年6月17日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

SNSはコミュニケーションの負担を免除するか

 ミックスチャンネルを巡っては、上述の通りキス動画の投稿そのものに対する議論や、動画投稿に関する若者の承認欲求など、議論すべきことが多い。にもかかわらず、多くの「大人」たちはアプリの存在そのものすら認知していないのではないか。海外でも若者に人気のアプリを最後に紹介する。

 2011年にアメリカで誕生したスナップチャット(Snapchat)は、本国におけるユーザーの7割が18~34歳、18~24歳だけでも半数近くある。ミックスチャンネルほどではないにせよ、こちらも若者にユーザーが多い(なおユーザー数は2億人近くとも言われるほど大規模なものだ)。

 スナップチャットは友人と写真や動画を送り合うアプリだが、送った写真・動画が10秒で消えることに特徴がある(消える前に受信者が写真・動画を保存した場合には、送信者に通知が行く仕組み)。悪ふざけなど、その場限りのものにしたい写真の履歴が消えることから、コミュニケーションの負荷免除を理由に人気だ。気軽に送れてしまうことからヌード写真のやりとりといった犯罪も発生してしまってはいるものの、こうしたアプリもまたそれぞれの設計にあった「見せたい」自分を演出した上で利用されていく。

 スナップチャットは投資面でも注目されていくことから、より規模を拡張し、より一般的な=全年齢層向けのアプリへと変質する可能性も十分にある。とはいえ、現時点では若者の利用が突出して多いのに変わりはない。

 こうしてみるだけでも、いくつものSNSが、特に若者に多く利用されていることがわかる。それらの利用時間が増加するごとに、コミュニケーションの負荷がかかり、キャラをわけた利用によって多様な自分を見せることで、アイデンティティが多様化する。こうした見方はコミュニケーションの過重を想起させるが、アイデンティティの多様化こそがコミュニケーションの分散化をもたらし、局所的な負担を免除するとの見方も可能だ。実際はユーザー個々人のメンタリティにも強く起因するが、その是非については稿を改めて論じたい。

  
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