海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年3月1日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

アメリカン・ドリームは死んだ

 トランプ候補は演説で、「アメリカン・ドリームは死んだ」と訴え、「アメリカン・ドリームを潰した犯人は、不法移民やイスラム教徒だ」というメッセージを暗示的に発信しています。その結果、トランプ支持者は、彼らを排除できればアメリカン・ドリームが復活し、自分たちの人生や生活が向上することができると固く信じているのです。

 トランプ候補が繰り返し述べる「アメリカを再び偉大な国にする」というスローガンには、「アメリカを再び多様性がなかった偉大な国にする」「アメリカを再び白人が優勢を保っていた偉大な国にする」という隠されたメッセージがあり、それが支持者の心に突き刺さるのです。というのは、彼らは文化的多様性を否定しているからです。

 異文化に対して嫌悪感を持つトランプ支持者には、トランプ候補が不法移民やテロの問題を解決してくれる「頼りになる強いリーダー」に映っているのです。トランプ候補の予備選挙及び党員集会における強さは現実ですが、支持者が見ているのは、同候補自身によって意図的につくられた実際とは異なるイメージです。一言で言ってしまえば、彼らはトランプという虚像を見ているのです。それが、危険なのです。「トランプ候補のコミュニケーションスタイルとモチベーションの高め方」(15年12月12日配信)で述べましたが、「トランプ」という英語には「頼りになる人」という意味があり、その言葉が持つ語感は支持者の耳にとても心地よいのです。

 虚像作りに成功したトランプ候補は、共和党候補指名争いにおいて確実に勢いを増しています。人種及び民族に対するステレオタイプ(固定観念)を選挙戦略に取り入れ、文化的多様性を否定し、社会を分断して支持獲得を目指している同候補は、グローバル社会で求められているリーダーとはとても言い難いのです。文化的相違を理解し、「異」を超え受容できる異文化対応型リーダーこそが、いま必要なのです。従って、異文化的視点から述べますと、トランプ候補の言動は正に文化的多様性に対する脅威であり、同候補はグローバル社会に相反する危険な候補であると言わざるを得ません。

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