今回のテーマは、「危険なトランプ陣営と脆弱なクリントン陣営」です。共和党候補指名争いでは、東部ニューハンプシャー州、南部サウスカロライナ州及び西部ネバダ州で勝利を収めた不動産王ドナルド・トランプ候補が、スーパーチューズデーにおいて多数の州で勝ち、ドミノ現象を起こして独走態勢に入るのか、あるいは他候補がそれにストップをかけるのかが注目点です。
一方、民主党候補指名争いでは、ヒラリー・クリントン候補が、ネバダ州とサウスカロライナ州で、バーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)に対してアフリカ系の票で圧勝し、両州を制しました。ワシントンでは一部の専門家が「トランプ対クリントン」を想定した議論を展開していますが、仮に両候補が指名を獲得できたとしても、現在抱えている諸問題を解決できない限り共に圧倒的な強さを発揮できないでしょう。
そこで本稿では、まず戸別訪問で得た有権者の声に基づいて、トランプ候補の問題点を異文化的視点から分析します。次に、筆者が内側から観察したクリントン候補が抱えている課題について述べます。そのうえで、今後の展開について触れてみます。
トランプ支持者と反文化的多様性
クリントン支持者及び決めかねている有権者は、トランプ候補を以下のように見ています。
ディータ・キャメロン(52)
「トランプは人種差別者です」
マーヴァ・ウイリアム(58)
「トランプは女性の敵です。非白人を嫌っています。もしトランプが大統領になったら、米国はかなり間違った方向へ進むでしょう」
アイオワ州デモイン在住のリリー・サムズ(49)さんの夫(アフリカ系)は、トランプ候補を人種差別者で偏狭者だと批判した上で、次のように語りました。
「トランプの支持者は、白人だけの社会に戻りたいのです」
戸別訪問で接触したトランプ支持者は、「不法移民の子供に市民権を与える必要はない」と述べ、「イスラム教徒入国全面禁止はいいアイデアだ」と称賛します。彼らの中には、アフリカからの移民が米国社会に同化しない点を強く非難し、自国に戻るべきだと主張する者もいます。さらに、戸別訪問の最中に、筆者を不法移民か否か問いつめるトランプ支持者もいました。
上で紹介したトランプ支持者はすべて白人男性です。戸別訪問で直面したトランプ支持者は、怒りや不満の矛先を不法移民及びイスラム教徒に向けていました。彼らは、人生や生活がうまく機能しない理由や米国社会が病んでいる原因を文化的多様性に帰しています。