海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年3月1日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

盤石でないクリントン陣営

クリントン候補は不正直というイメージを払拭できるのか?(iStock)

 次に、内側から観察したクリントン候補が抱える問題を指摘しましょう。アイオワ州デモイン南地区にあるクリントン選対には、ある人が述べたクリントン陣営とって屈辱的なコメントのコピーがすべての部屋に貼ってありました。

 「クリントン陣営には刺激とエネルギーがないし、これからも存在しないだろう」

 読者の皆さんは、誰のコメントだと推測しますか。中高年のボランティアが圧倒的に多いクリントン陣営を皮肉ったサンダース上院議員のコメントです。クリントン陣営の幹部が同議員のコメントをコピーして選対に貼り、スタッフとボランティアの運動員を鼓舞したのです。

 それに加えて、党員集会の当日(現地2月1日)、クリントン候補が笑みを浮かべながら突然選対を訪問し、こう言ってスタッフとボランティアの運動員のモチベーションを高めたのです。

 「不健康なドーナッツを持ってきました」

 砂糖がたっぷり付いた12個入りのドーナッツを自ら2ケース持って選対に入って来たのです。クリントン候補のユーモアによって、選対の中が和やかになったのです。

 続いて、クリントン候補は、スタッフとボランティアの運動員に感謝の意を示した後、次のように語って彼らの士気を高めたのです。

 「私たちはサンダース陣営よりも多く戸別訪問をしました」

 アイオワ州において1月30日と同月31日の2日間で、クリントン陣営は、12万5000軒、一方、サンダース陣営は7万6000軒の戸別訪問を実施しました。確かに、クリントン陣営は数字の上では勝っています。しかし、その裏側には、数字に表れない問題が存在していたのです。

 クリントン陣営のボランティアは高齢者が多いため、彼らに戸別訪問を期待できないのです。そこで、若手のスタッフ及びインターンが1日で、2ないし3パッケージをこなしていかなければなりません。1パッケージには、約30軒から40軒の同陣営が標的としている有権者が含まれています。つまり、1人1日60軒から120軒の戸別訪問を、雪道の中を歩きながら実施しなければならず、スタッフとインターンの負担が大きかったのです。クリントン陣営における若者の不足は、地上戦における選挙運動に影響を与えているのです。

 その対策としてクリントン陣営では、1ドルの小口献金を有権者に求めています。オバマ大統領でさえ、5ドルや3ドルの献金額でした。同陣営の狙いの1つは、若者に参加を促すことです。もちろん、サンダース上院議員からの大口献金を集めているという批判をかわす意図もあります。しかし、クリントン選対で観察をしている限り、1ドルの小口献金によって若者を引き付けているとは到底言えないのです。

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