2024年12月8日(日)

J-POWER(電源開発)

2016年11月18日

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日本のCO2削減目標と電源バランスの不可分な関係

渡部 COP21に先だち国連に提出した約束草案で、日本は2030年までに13年比で26%減の温室効果ガス削減目標を示しました。この日本が設定した目標についてはどう見ておられますか?

有馬 エネルギー自給率を東日本大震災前の水準に戻し、電力コストの上昇を抑えて、なおかつ温暖化防止にも貢献する。この3つの必要条件を満たすために、極めて難しい多次元連立方程式に取り組んだ末に得られた最適解と言えるでしょう。しかも、これを実現するには17%削減という石油危機並みの省エネが前提になるのですから、かなり野心的な挑戦だと思います。

写真を拡大 日本の電源構成の推移 2030年度に予想される電源構成は、日本が昨年掲げた温室効果ガス「26%削減」目標の達成を前提としている。化石燃料の比率を抑え、CO2フリー電源である再エネと原発の比率を引き上げる方針。出典:資源エネルギー庁資料をもとに作成

渡部 そのために設定された2030年度時点の電源構成は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)と原子力、石炭、天然ガスがそれぞれ全体のほぼ4分の1ずつとなるものにシフトすることが目標とされました。これにはどんな意味があるのでしょう。

有馬 再エネと原子力の比率を高めることで化石燃料の輸入コストを引き下げ、その節約分で高額な再エネの拡大に伴う負担増を吸収する、という図式です。温暖化防止だけを考えれば、再エネをもっと拡大すればいいと思われるかもしれませんが、そうすれば電力コストは間違いなく上昇し、日本の産業・経済に悪影響が出るでしょう。したがって、26%の削減目標はこの電源構成の実現が前提になるのであって、その最大の鍵が原子力発電なのです。

エネルギー安定供給に向けた再エネ・低炭素化への挑戦

渡部 エネルギーの安定供給とベストミックスを維持しながら、なおかつ温室効果ガスも減らすというのは本当に難しいことです。当社も昨年7月に中期経営計画を発表し、その重点事項のひとつとして低炭素化への対応を取り上げました。まずは重要なベース電源である石炭火力発電について、経年化した石炭火力プラントのリプレースを進めながら、世界最高水準の高効率発電技術を投入してCO2の発生を抑制し、同時に石炭ガス化や燃料電池、CO2分離・回収など次世代クリーンコール技術の開発への取り組みが欠かせません。

有馬 再エネへの取り組みも進んでおられるようですね。

グリーンパワーくずまき風力発電所(岩手県葛巻町)をはじめ、J-POWERグループは国内21地点に合計出力428,860kWの風力発電設備を有する。

渡部 風力には早くから着手して、現在は国内外で20カ所以上に発電設備を置きまして、日本の事業者としては第2位の規模となっています。また、電力需要を下支えするベースロード電源として期待されている地熱発電の開発にも、力を入れていく計画です。当社はそもそも、電力需要が旺盛な戦後の復興期に大規模水力発電の開発を促進するために発足した会社ですから、こうした純国産CO2フリーエネルギーのトップランナーであり続けたいと思っています。

有馬 確かに再エネの開発には大きなコストを伴いますが、おっしゃるように100%国産のエネルギーは拡大すべき大事なオプションだと私も思います。

J-POWERでは40年以上の運転実績を誇る鬼首地熱発電所(宮城県大崎市)の設備更新を行うほか、秋田県湯沢市では新規地熱発電所の建設を進めている。