2024年12月4日(水)

J-POWER(電源開発)

2016年11月18日

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グローバルな視野で生かしたい日本の技術とイノベーション

渡部 これからの温暖化防止に向けて、日本が技術力で世界に貢献できる可能性は大きいのではないかと私は思っています。有馬さんのお考えはいかがですか?

写真を拡大 石炭火力発電からのCO2排出量削減ポテンシャル 石炭への依存度が高い中国、インド、米国のすべての石炭火力発電所に日本のベストプラクティス(BP:最高水準)を適用すると、年間で約15億トンのCO2が削減できる。出典:IEA World Energy Outlook 2013、およびEcofys International Comparison of Fossil Power Efficiency and CO2 Intensity 2014よりJ-POWER作成 BP=ベストプラクティス:J-POWER磯子火力発電所の最高効率を適用した場合

有馬 同感です。言うまでもなく温暖化防止は一国では対処できないグローバルな問題ですし、温室効果ガスの削減量は国内でも海外でも等価です。であれば、これから経済発展する途上国からの排出増をいかに低く抑え、削減していくかという課題に対して、日本がすでに有している優れた技術を最大限に生かすことは非常に意義あることだと思います。先ほどのお話にもありましたが、J-POWERが取り組んでおられるIGCCやIGFC、CCSなど(*注)は、その最たるものでしょう。

渡部 これらはまだ実証試験の段階ですが、IGCCについては中国電力と共同で広島県に大崎クールジェンという事業会社を立ち上げ、経済産業省の支援も受けて進めているところです。実現すれば、既存の石炭火力発電設備に比べて発電効率が向上し、CO2排出量が低減できる見込みです。

 その一方、現状で海外に移転できるものとして、蒸気タービンの圧力と温度を極限まで高めて世界最高水準の発電効率を実現させたUSC(*注)という技術があります。当社の磯子火力発電所などがすでに導入し、インドネシアのセントラルジャワ石炭火力事業にも採用されています。

「大崎クールジェン」プロジェクトの完成予想図(広島県大崎上島町)。石炭ガス化複合発電など世界最先端の技術を用いた次世代高効率発電方式の実用化に向けた研究が行われている。

有馬 そうした技術に加えて、保守を含む運用ノウハウもぜひ移転してほしいですね。適切に管理された日本の石炭火力発電は、海外では考えられないほど高い運転効率を長期間維持していると聞いています。最近、欧米で石炭火力事業への支援を差し止める動きがありますが、新興国を中心に世界の国々の多くがまだ十分な電力を手にしていないのが実状です。温暖化だけでなく経済発展を課題に抱える新興国に石炭火力発電を使わせない、というのはバランスを欠いています。欧米でも、例えばポーランドはロシアへのガス依存度を下げたいとの思いがあり、石炭火力発電の利用は死活問題です。

渡部 米国はシェールガス・シェールオイルがありますし、欧州は各国が送電線でつながっています。欧州全体で見れば、石炭火力発電も原子力発電も活用していて、バランスが取れています。どのようにエネルギーを選ぶかは、まさにその国のありようによって決まるのです。

超々臨界圧技術により世界最高レベルの発電効率を実現させたJ-POWER磯子火力発電所(神奈川県横浜市)。

地球益を見据えて行動する新興国との連携プレー

有馬 IEA(国際エネルギー機関)の資料によると、石炭火力による発電量はOECD諸国で縮小する反面、非OECD諸国では拡大傾向にあります。今後も石炭への需要は減らないと目される以上、放っておけば低効率の安価な石炭火力設備がそうした地域で採用され、かえって事態を後退させかねない。そうではなく、必要な措置を講じて日本の高効率技術を普及し、日本発のイノベーションで地球全体での排出削減に貢献すべきです。

渡部 新興国と連携し、協力することが、国益と地球益をバランスさせる日本の貢献策のひとつですね。当社も世界が求める理想の姿を念頭に置き、低炭素化への対応に全力を注ぎながら、電力の安定供給を通じて世界に貢献したいと思います。

 

 

渡部肇史(わたなべ・としふみ)
1977年東京大学法学部卒業、電源開発株式会社入社。原子力部原子力業務課長、企画部民営化準備室長、経営企画部長などを経て、2006年取締役就任。取締役常務執行役員、代表取締役副社長・原子力事業本部副本部長を務め、2016年4月より現職。

有馬 純(ありま・じゅん)
1982年東京大学経済学部卒業、通商産業省(現経済産業省)入省。経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部参事官、国際エネルギー機関(IEA)国別審査課長、資源エネルギー庁国際課長、同参事官等を経て、大臣官房審議官地球環境問題担当(2008~11年)。日本貿易振興機構(JETRO)ロンドン事務所長兼地球環境問題特別調査員(2011~15年)。2015年8月より東京大学公共政策大学院教授。COPに過去11回参加。主な著作に『私的京都議定書始末記』(国際環境経済研究所)、『地球温暖化交渉の真実―国益をかけた経済戦争―』(中央公論新社)などがある。

(*注)
IGCC (Integrated coal Gasification Combined Cycle):石炭ガス化複合発電
IGFC (Integrated coal Gasification Fuel Cell Combined Cycle):石炭ガス化燃料電池複合発電
CCS (Carbon dioxide Capture and Storage):CO2分離回収・貯留
USC (Ultra Super Critical):超々臨界圧