ある成年後見人の手記

2017年8月11日

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松尾康憲 (まつお・やすのり)

ジャーナリスト

1953年生まれ。76年共同通信社入社。87年から2004年まで北京特派員、上海支局長、ハノイ支局長を歴任。現在は放送報道局委員。著書に『現代ベトナム入門 ドイモイが国を変えた』(日中出版)、共訳書に『中国の禁書』(新潮選書)、『性愛の中国史』(徳間書店) 

─―2014年3月27日付け「被後見人の近況の報告と今後の措置についての質問」
と題する書面中、照会事項に対する回答を致します。
1 由利子様が仮にお亡くなりになられた場合の、葬儀や埋葬等の手続を後見人がすることができるかについて
 被後見人が死亡すると、後見は終了し、康憲様は、後見人という立場ではなくなりますので、原則として葬儀・埋葬等の手続は後見人という立場ではなく、康憲様個人が善意で行うものであるという理屈になります。これらの手続は相続人その他の親族でなければ執り行えないというものではなく、誰であっても葬儀等の契約は可能なようです。具体的には当該契約相手等に確認していただく事項ですので、康憲様が葬儀契約ができるかは葬儀会社へ、死亡届けが出せるかは市役所へお問い合わせいただくのが確実かと思います。
2 死亡後の手続について
 仮に由利子様がお亡くなりになられた場合は、すぐに裁判所へ電話連絡をしてください。その後、していただく事務については説明書等をお送りしますので、その内容を確認して手続いただければ結構です。おおまかには、法務局で終了登記の手続をしていただくことと、裁判所へ最終の財産収支状況の報告書を提出していただくことで後見事務は終了します。裁判所への報告書は、原則死後2か月以内に出していただくことになっています。残った由利子さんの遺産を相続する人がいない場合は、相続財産管理人選任申立をしていただくことになります。その申立手続については当庁の家事受付に、審理手続等詳細な事項については財産管理係にお問い合わせください。以上─―

 上から目線に加えて木で鼻を括ったような文言に、頭に来た。遺産の相続権もないにもかかわらず成年後見人をやっているのに、この上、「葬儀・埋葬等の手続きは後見人という立場ではなく、康憲様個人が善意で行うものであるという理屈になります」と、なぜに「善意」を強要されねばならないのか。しかし、私が今抱いている憤りを私憤から公憤に変えねばならない、と思い改めた。家裁に怒鳴り込んだところで、モンスター後見人扱いされるのが関の山だ。葬式代の自己負担など大したことではない。求められるなら、払ってやろうではないか。由利子が逝った際に手抜かりなく葬儀・納骨できるよう準備に着手した。

 3月14日にハーネストから由利子の不調を告げられ見舞って以来、由利子が逝くまで、計7回見舞ってきた。施設だけでなく、寺や裁判所にも出向き、いざという時に備えて協議を重ねた。(つづく・裁判所が前言撤回、認められた葬式代【ある成年後見人の手記(6)】)
法律家任せでええんか?後見制度【ある成年後見人の手記(4)】

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PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・前編:品川モデル
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・中編:「品川モデル」構築のキーマン・インタビュー
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・後編:大阪モデル
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