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2019年5月24日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

仲介者の立場守りたい文大統領

 今回、韓国は弾道ミサイルとは認めていない。文在寅大統領のコメントも「こうした行動が続けば、対話と交渉を危うくする」と米国同様、穏やかというより明らかに腰が引けている。

 文大統領は米朝交渉にあわせて、開城工業団地など北朝鮮との経済交流再開に意欲を燃やす。そもそも、米朝関係の仲介役を自任、昨年6月の米朝首脳会談に先立つ4月に、韓国と北朝鮮を分断する板門店で会談したのをはじめ、これまで3回にわたって金正恩と会談、緊密な関係をアピールしている。

 それだけに、米朝対話の崩壊は仲介役としての立場を失わせることにつながり、核問題を自らに有利に解決しようという思惑の挫折も生む。並外れて寛容な韓国の支援の背景には、こうした事情がある。

米情報機関、核開発は継続と分析

 米国、韓国の足もとを見透かすように金正恩は今後も挑発を続けてくるだろう。

 北朝鮮は、対話再開の〝最終期限〟をことし年末と勝手に設定し、それが実現しなければ「米国が望まない結果を招く」(崔善姫第一外務次官)などと恫喝。じっさい、朝鮮中央通信(KCNA)は、金正恩が5月10日、「防衛部隊の能力増強をめざし打撃訓練を指導した」と伝え、〝闘志満々〟のところをみせた。

 懸念されるのは核実験再開だが、そうして事態になれば、現在のところ静観している中国やロシアを刺激、あらたな制裁に同調させることになるため、現時点では可能性は低いという見方が主流だ。

 トランプ大統領は昨年のシンガポールでの第1回米朝首脳会談以来、「北朝鮮の核の脅威は除去された」と繰り返してきたが、米国の情報機関は衛星写真によって、北朝鮮は依然、核開発を継続していると結論づけている。

 米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が5月に公表した衛星写真によると、朝鮮半島の非武装地帯北百数十キロ付近の山岳をトンネル状に掘削、軍事基地を建設している。ミサイル本体こそ写っていないが、収納施設、移動発射装置などとみられる施設、装置が鮮明だという。

 米国の軍事専門家やシンクタンクなどは今回発射されたミサイルの型式についても関心を持っている。ロシア製の「イスカンデル短距離ミサイル」とみられ、飛行中の軌道修正が容易、通常の弾道ミサイルより低い高度で飛ぶことが可能で、ミサイル防衛システムによる破壊が困難という。

 北朝鮮がこうしたミサイルを保有していることも、ミサイル開発がなお継続されていることを示している。

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