海野素央の Love Trumps Hate

2017年3月9日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

何のための反「原則立脚型交渉」なのか

 トランプ大統領は何を最終目標に置いて反「原則立脚型交渉」を行っているのでしょうか。読者の皆さんは「米国第一主義を達成するため」と回答するかもしれません。選挙期間中、同大統領はヒラリー・クリントン元国務長官をグローバリズムの擁護者、自身を米国第一主義の代表として描き対立軸を鮮明にしてきました。演説の度に「私の仕事は世界を代表することではない。米国を代表することだ」と力説しています。

 トランプ大統領が掲げる「米国第一主義」は、大統領首席戦略官スティーブン・バノン氏のモノの見方や考え方(バノンイズム)の影響を受けています。例えば、「開かれた国境」の弊害です。グローバル化によって人々が国境を越えて行き来することにより、国内テロの危険性が増し安全性が低下したと捉えているのです。

 しかもバノン氏は「開かれた国境」によって人種や民族における国際的な融合が進み、その結果国家の最も重要な財産である文化的アイデンティティが喪失しているとみています。特に、米国社会における白人及びキリスト教徒のアイデンティティが、非白人の移民及び難民により脅威にさらされているという危機意識があるのです。バノン氏が会長を務めていた「ブライトバート・ニュース」を見ますと、イスラム教徒に対する敵意に満ちた記事があります。同氏は「ブライトバート・ニュース」をホワイトハウスの政策綱領と呼んでいます。トランプ大統領が難民に対して厳格な身元審査を求めているのは、政策綱領に従って行動していると解釈できます。

 米国社会におけるイスラム化の回避と白人並びにキリスト教徒の文化的アイデンティティの確保は、バノンイズムの1つです。トランプ大統領の反「原則立脚型交渉」は、グローバリゼーションの光と影の後者に焦点を当てて、グローバル化に代わり米国社会の「バノン化」を図る目的で使われています。

  
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