2024年4月25日(木)

J-POWER(電源開発)

2018年5月18日

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世界最高水準の発電効率と環境保全対策を実現した磯子火力発電所。1967年、石油へのシフトで低迷する国内炭を保護するために生まれた発電所の歴史に、吉崎氏は胸を打たれた。

クリーンコールという脱炭素社会への迂回アプローチ

 地政学リスクと長期的視点、電源構成のバランスを掛け合わせたとき、実は石炭が果たす役割は予想以上に大きいのではないか。その推察の根拠を確かめるため、吉崎氏は横浜市にあるJパワー磯子火力発電所を訪れた。国内外からの視察者が年間約6000人を数えるというこの石炭火力発電所は、発電効率と環境性能で世界最高水準にあると聞き、足を運ぶことにした。

 「世界中に広く分布し、埋蔵量が豊富で価格も安定している石炭は、今なお有望な資源です。採掘可能な年数は天然ガスや石油の約2倍、まだ114年もあるといいます。ただ、環境面ではCO2が出てしまうので、どうしても世間の風当たりが強い。そこをどうクリアできるのか関心がありました」

 世界がこの発電所に注目する理由もそこにある。超々臨界圧(USC)と呼ばれる技術により発電効率を極限まで高めることで、石炭の使用量を減らし、USC導入前と比べてCO2の排出量を約17%削減した。この技術を石炭依存度の高い米国、中国、インドの石炭火力に適用すると、日本の年間CO2排出量に匹敵する約12億トンの削減効果が期待できるという。

 「今の国際世論は『石炭=悪』の一辺倒ですが、一方では石炭は十分あるのに電力が不十分で発展がままならない国も存在するわけで、そこに向かって一様に石炭禁止を訴えても実効性は望めないでしょう。むしろ『CO2を減らせるクリーンコール技術』を伝えるほうが大事だと思います」

 J-POWERではこれまでUSCの次世代技術である先進的超々臨界圧(A-USC)や、石炭に酸素を加えてガス化することでガスタービンと蒸気タービンの両方を使って発電する酸素吹きIGCC(石炭ガス化複合発電)、さらにこれに燃料電池まで組み込むIGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)と、世界にまだない未曾有の発電効率の実現に道を拓いてきた。火力発電からのCO2を分離・回収し、地中深くに埋め戻すCCS技術の研究も進み、これらの実用化に向けた実証プロジェクトにも他社と共同で取り組んでいる。

 「政府は2050年までに温室効果ガスを8割削減する目標を立てていますが、その実現のためにも『石炭火力』という選択肢を残しておくことは重要です。脱炭素化への道は、革新的技術を使って経済発展も進めながらCO2を減らす、という迂回的アプローチをとるべきだと私は考えています」

 その迂回が思いもよらないイノベーションを生む可能性もあると、吉崎氏は密かな期待を胸に磯子を後にした。

電気の安定供給を支えるJ-POWERグループ

中国電力と共同で進める大崎クールジェンの実証プロジェクト(広島県大崎上島)。究極の高効率発電技術であるIGFCとCO2分離・回収技術を組み合わせた「革新的低炭素石炭火力発電」の実現を目指す。
戦後日本の電力不足を解消し、復興に貢献した佐久間ダム・発電所(静岡県)。半世紀を経て今なお活躍中。

 J-POWER(電源開発株式会社)は1952年9月、全国的な電力不足を解消するため「電源開発促進法」に基づき設立された。その目的を達するため、まず大規模水力発電設備の開発に着手。次いで70年代の石油危機を経てエネルギー源の多様化が求められるなか、海外炭を使用した大規模石炭火力発電所の建設を推進。現在、J-POWERグループでは主力の石炭火力発電に加え、ともに国内第2位のシェアを占める水力発電と風力発電、また地熱発電やバイオマス燃料製造など、再生可能エネルギーの導入拡大にも力を入れてエネルギーの安定供給に努めている。さらに、これまでに蓄積してきた技術力と経験を活かし、世界64カ国・地域で海外コンサルティング・発電事業を展開する。

●J-POWERグループの主な発電設備
・水力発電所 61カ所 857万kW
・火力発電所 12カ所 885万kW
・風力発電所 22カ所 43.9万kW
(2017年4月1日現在 持分出力ベース)