「電源開発」が切り拓くCO2フリー電力の未来
同様の設備更新は各地で見られ、静岡県浜松市の秋葉第一発電所では今年、1900kWの増出力を完了。北海道の足寄発電所でも、2022年増出力を目指して準備が進む。「水」という自然エネルギーを最大限に活かす試みは他にもある。前出・鈴木氏は話す。
「リパワリングとの両輪で、Jパワーでは未利用エネルギーの開発も進めています。まだ使われていない中小の水資源を発掘し、電力として有効活用するわけです。例えば、河川周辺の生態系や景観を損なわないよう、ダムから常に一定量の水を放流する維持流量というものがありますが、この水を発電に有効利用することも考えられます」
北海道十勝川水系の屈足ダムで3年前に完成した、くったり発電所はその一つだ。また、このき谷発電所(福井県九頭竜ダム)のように、貯水池に注ぎ込む際の遊休落差を小規模発電に有効利用する例もある。くったり発電所の開発に携わったJパワー土木建築部の髙倉秀幸氏は、「規模が小さくても当社の水力発電所の一つに名を連ねる重要な電源です。今後も『電源開発』の名に恥じぬよう、新たな可能性を見出し旗を立てていきたい」と意欲を見せる。
髙倉氏はまた新桂沢・熊追発電所の更新計画にも関わり、水力事業に課せられる新たな使命を感じたという。
「新桂沢ダムは、治水、水道、工業用水、発電といった複数の機能を兼ねる特定多目的ダムです。治水と利水には、特に水位運用の面で相反する側面があるものの、双方にとってwin-winとなる関係を構築できるかどうかが、今後ますます重要になっていきます。そのために、設備・運用の両面から最適化を図れるよう、知恵を絞っていかなくてはなりません」
その意味でも、この事業は「未来への試金石となる重要なプロジェクト」(髙橋氏)なのである。
未来とは─脱炭素化に貢献する純国産CO2フリーエネルギーのトップランナー。資源に乏しいこの国の未来を拓く鍵が、そこに重なって見える。
電気の安定供給を支えるJ-POWERグループ
J-POWER(電源開発株式会社)は1952年、戦後の電力不足を解消するため発足した。その目的を達するため、まず大規模水力発電設備の開発に着手。次いで70年代の石油危機を経てエネルギー源の多様化が求められるなか、海外炭を使用した大規模石炭火力発電所の建設を推進。現在、再生可能エネルギーの拡大に力を入れるほか、石炭火力の「低炭素化」に向けた技術開発にも取り組む。さらに、タイや米国を中心に海外での発電事業も展開している。
J-POWERグループの主な発電設備(国内)
●水力発電所:61カ所、857万kW
●火力発電所:12カ所、889万kW
●風力発電所:22カ所、43.9万kW
(2018年3月末現在 持分出力ベース)
「水力」とともに進展する再生可能エネルギー事業
●風力発電
国内シェア2位の発電出力を保有。国内22カ所に設備を持ち、新たに3カ所が2019年度中に運転開始予定。英国の洋上風力発電事業にも参画しており、今後の開発に期待が高まる洋上風力のノウハウ蓄積を進めている。
●地熱発電
40年以上の運転実績を持つ鬼首地熱発電所では設備更新が予定されている。また、2019年には出力1万kW以上の大型地熱発電所として国内23年ぶりとなる、山葵沢地熱発電所が運転開始予定。
●バイオマス発電
他の事業者とも連携し、間伐材や下水汚泥から生成したバイオマス燃料(木質ペレット等)を製造。石炭とともに火力発電所で混焼し、CO2排出量削減を実現している。現在、国内最大級の木質ペレット供給事業を計画中。