国連の人権高等弁務官事務所(OHCHR)は7日、イランで昨年、少なくとも901人に対する死刑が執行されたとみられると発表した。そのうち約40人は、12月の1週間で処刑されたとしている。
フォルカー・トゥルク国連人権高等弁務官は、「イランで死刑となる人々の数が年々増加していることは非常に憂慮すべきことだ。イランはこの増え続ける処刑の波を食い止めるべきだ」と述べた。
この人数は過去9年間で最も高く、2023年の853人から6%増加している。
国連によると、死刑執行の大半は薬物関連の犯罪によるものだが、2022年の「女性、生命、自由」抗議活動に関連した反体制派や、その関係者も処刑された。また、死刑となった女性の数も増加している。
トゥルク氏はイラン当局に対し、今後の死刑執行を停止するとともに、最終的には死刑を廃止することを視野に入れた死刑の一時停止を行うよう強く求めた。
また、「死刑は基本的な生存権と相いれず、無実の人々を処刑するという受け入れがたいリスクを伴う。そして、国際人権法で保護されている行為に対しては、決して死刑を科すことはできない」と警告した。
OHCHRの報道官は、今回発表された数字について、イラン国外を拠点とするイラン人権活動家通信(HRANA)、ノルウェー拠点の人権団体イラン・ヒューマン・ライツ(IHR)、クルド系人権団体ヘンガウなど、信頼できる複数の組織から提供されたものだと述べた。
女性は少なくとも31人
IHRは6日に発表した報告書で、2024年に少なくとも31人の女性の死刑が執行されたと発表した。これは、同団体が17年前に死刑の監視を開始して以来、最多だという。
報告書によると、うち19人は殺人罪で有罪判決を受けた後に死刑を宣告された。この中には、レイラ・ガエミさんも含まれている。IHRによれば、ガエミさんはある日、帰宅した際に夫とその友人たちが幼い娘をレイプしているのを発見し、夫を絞殺したという。
残りの12人は薬物関連の犯罪で有罪判決を受けた。IHRは、この中にパルヴィン・ムサヴィさんが含まれていると指摘している。一家の稼ぎ手だったムサヴィさんは、薬だと言われて運んだものが実際には5キロのモルヒネだった。この時、ムサヴィさんはおよそ15ユーロ(約2500円)を受け取ったという。
人権擁護活動家らは、薬物犯罪は国際法の下で死刑が適用される「最も重大な犯罪」の基準を満たしていないと主張している。
少数民族に偏っているとの指摘も
ヘンガウが発表した別の報告書によると、昨年処刑された人々の半数以上がイランの少数民族出身であり、その中には183人のクルド人が含まれているという。
国連のイランに関する事実調査団は8月、2022年に「女性、生命、自由」抗議運動が全国的に勃発して以来、イラン政府の反対派弾圧によって、民族的および宗教的少数派が不均衡に影響を受けていると発表した。この抗議運動は、髪の毛を覆うヒジャブを「不適切に」着用していたとして道徳警察に逮捕されたクルド人のマサ・アミニさん(22)が、その後に死亡した事件に対する反発から始まった。
一方HRANAは、5人の未成年犯罪者の死刑執行を記録したと報告している。国際法では、被告が犯行時に18歳未満だった場合、死刑の適用が禁止されている。
人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルによると、2023年に世界で記録された死刑執行の74%がイランでのものだった。
ただし、これらの数字には中国は含まれていない。アムネスティは、中国では毎年数千人が処刑されていると考えられているが、死刑に関するデータは機密扱いになっていると指摘している。
(英語記事 Iran reportedly executed at least 901 people in 2024, UN says