2024年4月26日(金)

風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2009年10月16日

 

 日々の活動の中で、状況に応じてきめ細かく指導される「食の自立」の中身をすべて言い表すことは難しいが、あえて列挙するならこのようになるだろう。「食べることとは“いのち”の再生産を行うことであり、生きる力の基本である」という考え方に基づいて「食の自立」を促す。そして、「食の自立」を達成することが、自分の“いのち”を自分で支えていけるという自信、すなわち誇りに繋がっていくと考えているのである。

 また、食事を「“いのち”を維持する営み」と捉えるだけでなく、「人間としての文化的な営み」として捉え、その意味を子どもたちが体感できるような生活作りを重視している。

 「人間の食事は、動物のエサとは違って、単に空腹を満たせばよいのでなく、生理的な満足感にとどまらない心の充足感を伴う文化的な営みなのです。一緒に食事を作ったり、一緒に食べておいしいという感動を共有し合ったりする中で、人と人とのつながりが育まれていきます。家族が一緒に食事をすることも難しい現代の状況はありますが、少なくとも発達の途上にある子どもたちには、人間的な豊かさを体感できるような食生活を作ってあげる。これが大人の責任ではないでしょうか」(天野園長)

好き嫌いも多い幼児期
食への関心はどう育てるのか?

 「では、どうすればそのような食生活がつくれるのか?」という質問に対しては、意外な答えが返ってきた。

 「まず基本中の基本は、子どもたちにお腹がすく生活をさせることです」(天野園長)

 話は横道にそれるが、風の谷幼稚園には、教育を実践していく上での4つの柱とも呼べる方針がある。それは

1)体ごと遊ぶ
2)手を使う
3)いっぱい歩く
4)親も一緒に

 というものだ。この1)~3)の方針にのっとり、この幼稚園の子どもたちは本当によく動く。週の3~4日は遠足や散策に出かけ、自然の中で泥まみれになって鬼ごっこ。そして、木工の時間には自分でのこぎりを引いて釘を打つ大工仕事、さらには農作業に採取活動と、休む暇もないほど思い切り体を動かす。確かにこれだけ体を動かせば、お腹はペコペコになるだろう。まず、ここで「食の自立」への基礎は出来上がる。

食を通じて発見の毎日
イナゴや芋がらもおいしく食べる

 そして、幼稚園での日常生活の様々な場面で、食への興味・関心を高めるための指導が行われる。


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