イラン軍は26日、同日未明のイラン領内に対するイスラエルの攻撃で、新たに2人の兵士の死亡が確認されたと発表した。この日の攻撃によるイラン兵死者は計4人になった。
イスラエル国防軍(IDF)はイラン北部テヘラン近郊と、西部のミサイル工場などを標的にしたとしていた。
イラン外務省は、イランには自衛する責任があるとしつつ、「地域の平和と安全保障に対する責任があることを認識している」とした。この声明は比較的融和的なものと受け止められている。
26日の攻撃についてイラン防空当局は声明で、イスラエルがイラン北部テヘラン、南西部フゼスタン、西部イラムの3州にある軍事施設を攻撃したと発表。イスラエルの攻撃には無事に対抗したものの、一部の場所で「限定的な被害」があったとした。
攻撃後、イラン国営メディアはいくつかの市街地で通常通り車が走行する映像を放送し、学校やスポーツ活動は予定通り行われていると伝えた。
イランで複数の爆発が報告されて間もなく、IDFは対イラン攻撃を実施したと発表した。IDFのダニエル・ハガリ報道官は「イスラエル国家を防衛する」覚悟を示したと述べた。
また、イランが新たなエスカレーション(状況激化)を始めればイスラエルは「対応せざるを得なくなる」と警告した。
イランは10月1日にイスラエルに向けて200発近くの弾道ミサイルを発射した。イスラエルがこれに報復するはずだと、数週間前から広く予想されていた。
イランは1日の攻撃について、同国が支援するイスラム組織ハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤ政治局長(62)がイラン・テヘランでイスラエルによる攻撃で殺害されたことへの報復だとしている。ミサイルの多くはイスラエルとその同盟国が撃墜したが、いくつかはイスラエル中部と南部に着弾した。
各国の反応
アメリカとイギリスはイランに対し、イスラエルに反撃しないよう求めている。バイデン米政権は暴力行為の連鎖を止めるよう呼び掛けている。
米政府高官によると、アメリカはイスラエルの攻撃について事前に知らされていたが、米政府は攻撃に関与していない。
イランの石油インフラや核施設への攻撃はなかった。これらの目標を攻撃しないよう、バイデン政権はイスラエルに求めていた。
米政府高官は、アメリカはイスラエルに数週間にわたり「民間人に危害を加えるリスクが低い、標的を絞った」対応を取るよう促してきたとし、26日に「起きたことはまさしく」その働きかけの現れだとした。
しかし、イスラエルの首相官邸は声明で、同国は「アメリカの指示ではなく国益に基づいて」標的を選んだと述べた。
キア・スターマー英首相はイスラエルには「イランの侵略」から自国を守る権利があるとし、イランに報復を回避するよう繰り返し求めた。また、イギリスは「この地域全体の状況緩和」に取り組んでいくと述べた。
一方でロシアや、アメリカと同盟関係にあるヨルダンやサウジアラビアなどの中東諸国は、イスラエルが紛争をエスカレートさせていると非難した。
カタールは「このエスカレーションから生じるかもしれない深刻な影響を、深く懸念する」と表明。ヨルダンは、イスラエルの攻撃が「危険なエスカレーション」だとした。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、「必要なのは、イランを挑発して報復させるのを止め、制御不能なエスカレーションのスパイラルから抜け出すことだ」と述べた。
攻撃範囲や標的は
イスラエルの攻撃の範囲や正確な標的は、26日朝の時点ではまだ明らかではない。
イランの航空当局は航空機の発着を中断したものの、26日午前9時の再開を発表した。
工場従業員のフーマンさん(42)は、テヘラン市内で勤務中に複数の爆発音を聞いたとAFP通信に語った。
「音が反響していた。(中略)恐ろしくてぞっとした」
「中東で戦争が起きている今、それに巻き込まれるのを私たちは恐れている」
隣国シリアの国営メディアは、イスラエルの空爆はシリア中部と南部をも標的にしていると報じた。
イスラエルのイラン攻撃を受け、イランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは26日午後、レバノン側からイスラエルに向けて80発のロケット弾を撃ち込んだと、IDFは発表した。
AFP通信も後に、ヒズボラがハイファ近郊のクラヨット郊外を含むイスラエル北部の5つの住宅地にロケット弾を発射したと報じた。
(英語記事 Israeli strikes on Iran kill four soldiers, Iran says)