フランスのエマニュエル・マクロン大統領(46)は13日、内閣不信任で首相を辞任したミシェル・バルニエ首相(73)の後任に、中道政党「民主運動」のフランソワ・バイル党首(73)を任命した。国民議会(下院、577議席)で単独過半数に届く政党がなく、数カ月にわたり続く政治的混乱に終止符を打つため、中道派のバイル氏を選んだものとみられる。
バイル氏は、フランスが「ヒマラヤのようにそびえ立つ」課題に直面していることを十分に認識していると述べ、「何も隠さず、何も無視せず、何も脇に置かない」ことを誓った。
前任者のバルニエ氏は、2025年度の社会保障に関する予算案を強行採択し、野党の反発を招いた。国民議会は4日、バルニエ氏率いる内閣の不信任決議案を賛成多数で可決し、同氏は辞任した。
第2次マクロン政権は、任期5年の約半分を残している。
今年に入り4人目の首相
バイル氏は13日午後、首相公邸「マティニョン」に到着。今年に入り4人目のフランス首相となった。同氏の人選発表より先に、公邸前には就任式のために赤いじゅうたんが用意されていた。
マクロン大統領が7月に解散総選挙を決定して以降、同国の政治は行き詰まっている。仏テレビ局BFMTVが12日に発表した世論調査は、有権者の61%が政治状況に不安を抱いているという結果だった。
バイル氏の首相就任を称賛する声が連携勢力から相次いだが、南西部オクシタニー地域圏のキャロル・デルガ議長(中道左派「社会党」)は、このプロセス全体が「つまらない映画」のようになってしまったと述べた。左派連合の最大政党「不屈のフランス(LFI)」の全国代表のマニュエル・ボンパール氏は、「みっともない見世物」だと評した。
社会党はバイル氏と話し合う用意はあるとしつつ、同氏が率いる政権には参加しないとした。オリヴィエ・フォール党首は、マクロン大統領が「自分の派閥の」人物を選んだので、社会党は野党にとどまるつもりだと述べた。
マクロン氏は先週、バルニエ氏が失脚した後も、2027年の任期満了まで大統領職にとどまると誓った。
就任後の課題は、前任者バルニエ氏のように国民議会で退陣を迫られることのない政権を樹立することだ。LFIはすでに、出来るだけ早期に不信任案の採決を求めるつもりだと警告している。
マクロン氏はバイル氏の就任に先立ち、ジャン=リュック・メランション氏率いるLFIと、マリーヌ・ル・ペン氏率いる極右「国民連合(RN)」をのぞく、すべての主要政党の党首と会談していた。
問題は、誰が説得に応じて、バイル氏率いる内閣に加わる、あるいは少なくとも、同氏を追い出さないことに合意するかだ。
左派と右派の双方との関係を改善することが、少数与党政権が存続するための唯一の手段だとすれば、両者ともまずまずの関係を持っているバイル氏には利点があると、ヒュー・スコフィールドBBCパリ特派員は指摘する。
バルニエ氏が退陣に追い込まれた結果、不信任案につながった社会保障関連予算案の成立は難しくなった。
バイル氏は財政赤字と債務を削減することは「道義的な義務」だと述べた。
バルニエ氏は「この国は前例のない深刻な状況下にある」とし、バイル氏の幸運を祈った。
社会党、緑の党、共産党の中道左派3党は、マクロン氏との会合に出席したことで、より急進的なLFIとたもとを分かつことになった。
ただ、3党は、自分たちが望んでいるのは中道派ではなく左派の首相だと明確にしている。
緑の党のマリーヌ・トンデリエ党首は12日、「左派で、緑の党の誰かをしていると、私は話していた。バイル氏はそのいずれでもないと思う」と、仏テレビ局に語った。
社会党のパトリック・カネール氏は、同党はバイル内閣に加わらないが「(同内閣を)攻撃するつもりはない」と述べた。
国民連合のセバステイアン・シュニュ議員は、同党にとってはマクロン氏が誰を選んだかよりも、同氏が選んだ「政治路線」の方が重要だと述べた。もしバイル氏が移民問題や生活費の問題に対処するならば、「我々は味方する」とした。
中道左派と、メランション氏率いるLFIの関係は、マクロン氏と協議するという3党の決定をめぐり、決裂した様子。
社会党のフォール党首は、かつての同盟勢力に連立回避を呼びかけたメランション氏について、「メランションが叫べば叫ぶほど、彼の声は届かなくなる」と、仏テレビ局に語った。
一方でRNのル・ペン氏は、バイル内閣が「各党のレッドラインを越えない」予算を組み、生活費に関するRNの政策を考慮することを求めている。
(英語記事 No-one gets France's difficulty more than me, says Macron's new PM Bayrou)