2025年1月9日(木)

BBC News

2025年1月8日

アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は7日の記者会見で、グリーンランドとパナマ運河を獲得するために軍事力や経済力を行使する可能性を否定するかと問われ、「いや、その二つについてはどちらも断言できない」と答えた。

トランプ氏は昨年末、デンマーク自治領のグリーンランドと、中米パナマが得ているパナマ運河の管理権を、アメリカが獲得することを望んでいると発言。以来、その意欲が弱まる気配はない。

この日、フロリダ州の私邸マール・ア・ラーゴで開いた記者会見では、「私が言えるのは、それらが経済的安全保障のために必要だということだ」と述べた。ただ、こうした発言がどこまで本気なのか、交渉の駆け引きに過ぎないのかは、定かではない。

デンマークもパナマも、領土を放棄する可能性を全面否定している。

「カナダ合併」についても

トランプ次期大統領は、カナダの合併を試みるつもりがあるのか問われると、「経済力」を行使することを誓い、アメリカとカナダの国境は「人為的に引かれた線」だとした。

アメリカとカナダの境界線は、2国間で共有する世界最長のもので、1700年代後半のアメリカ建国にさかのぼる条約で定められた。

次期大統領は、アメリカはカナダを保護するために何十億ドルも費やしているとし、カナダからの自動車や木材、乳製品の輸入について批判した。

「彼らは(アメリカの)州であるべきだ」と、トランプ氏は記者団に語った。

しかし、6日に辞任の意向を表明したカナダのジャスティン・トルドー首相は、カナダとアメリカが合併する可能性は「ないに等しい」としている。

7日の記者会見は当初、アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイの開発業者ダマック・プロパティーズが、アメリカでのデータセンター建設に200億ドルを投資することを発表する、経済開発プロジェクトの発表の場とされていた。

しかし、トランプ次期大統領の発言は、環境をめぐる規制やアメリカの選挙制度、自身に対するさまざまな訴訟、そして今月退任するジョー・バイデン大統領に対する批判にまで及んだ。

さらに、メキシコ湾を「アメリカ湾」に名称変更することを提案。また、風力タービンが「クジラを狂わせている」と述べ、風力発電に反対する姿勢を改めて示した。

グリーンランドは「軍事的取り組みで非常に重要」

こうした中、トランプ氏の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏はグリーンランドを訪問した。

首都ヌークに到着する前、トランプ・ジュニア氏はグリーンランド訪問について、人々と話をするための「個人的な日帰り旅行」で、政府関係者との会談は予定していないと述べていた。

デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、同国のテレビ局からトランプ・ジュニア氏のグリーンランド訪問について問われると、「グリーンランドはグリーンランドの人々のもの」であり、彼らの将来を決められるのは地元住民だけだと述べた。

フレデリクセン首相はまた、「グリーンランドは売り物ではない」とするグリーンランド自治政府の主張に同意しつつ、デンマークには北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるアメリカとの緊密な協力が必要だと強調した。

グリーンランドはデンマークの自治領であり、大規模なアメリカの宇宙軍基地が存在する。また、アメリカから欧州各国への最短ルートの中にあるため、アメリカにとって戦略的に重要な場所でもある。

また、バッテリーやハイテク機器の製造に欠かせないレアアース(希土類)の埋蔵量は世界有数の規模を誇る。

トランプ氏は、「そこらじゅうにいる」中国やロシアの船舶を追跡する軍事的取り組みにおいて、グリーンランドは極めて重要な場所だと示唆。

「私は自由な世界の保護について話をしている」と記者団に語った。

パナマ運河については

トランプ氏は昨年の大統領選で再選を果たして以来、パナマ運河の管理権奪還など、アメリカの領土拡大という考えを繰り返し発信している。

7日の記者会見では、「我が国にとって不可欠」なパナマ運河が「中国に運営されている」と主張した。

トランプ氏は以前にも、大西洋と太平洋を結ぶパナマ運河を通航する米船舶に対し、パナマが通航料を過剰請求していると非難していた。

パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は、パナマ運河に「中国はまったく干渉していない」と、トランプ氏の主張を否定した。

香港を拠点とするCKハチソン・ホールディングスは、運河の入り口にある二つの港を管理している。

パナマ運河はアメリカが1900年代初頭に建設し、1977年まで運河地帯の管理権を維持していた。その後、ジミー・カーター政権下で交渉された条約に基づいて、管理権が徐々にパナマに移された。

「パナマ運河をパナマに与えたことは、非常に大きな間違いだった」とトランプ氏は述べた。「(カーター氏は)いい人だった。(中略)だが、あれは大きな間違いだった」。

アメリカの領土を拡大することに、とりわけ、約4万1000万人が暮らす、世界第2位の面積を有するカナダをアメリカに加えるということに、トランプ氏がどれほど本気なのかは不明だ。

トランプ氏はこの日の記者会見で、2021年1月の米連邦議会議事堂襲撃に、レバノンのイスラム教シーア派ヒズボラが関与していたと示唆するなど、多数の虚偽や奇妙な陰謀論も繰り返した。

(英語記事 Trump ramps up threats to gain control of Greenland and Panama Canal

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c99xee700r2o


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