2026年10月9日(金)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2026年10月9日

 9月に旧東独の2州で行われた州議会選挙では、極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)が圧勝し、フリードリヒ・メルツ首相が率いるキリスト教民主同盟(CDU)は歴史的な惨敗を喫した。メルツ氏の責任問題が浮上しているものの、社会保障改革を完遂するという重要な任務のために当面は首相を続投する。

(ロイター/アフロ)

「旧東ドイツが旧西ドイツに復讐」

 この秋、ドイツ政界に激震が走った。9月6日にザクセン・アンハルト(SA)州、9月20日にメクレンブルク・フォアポンメルン(MV)州で行われた州議会選挙は、政治地図を塗り換える分水嶺となった。

 これらの州の有権者たちは捜査当局から「過激勢力」と認定されているAfDの得票率を前回選挙の2倍に押し上げ、逆にメルツ氏のCDUに代表される伝統的政党の得票率を半分に減らした。伝統的政党の経済政策、エネルギー政策、難民政策、外交政策に対する不満と、将来に対する不安、ドイツ統一後、西側に牛耳られてきた旧東ドイツ人たちの「恨み」が爆発した。この国の論壇では「旧東ドイツ人たちは、投票用紙を使って、旧西ドイツに復讐した」という見方が出ている。

 今回の選挙の特徴の一つは、AfDへの人気の急激な高まりだった。たとえばSA州でAfDが記録した43.8%という得票率は、これまでドイツで行われてきた200回の州議会選挙で、一党が記録した得票率としては最高だった。

 AfDのSA州支部のウルリヒ・ジークムント首相候補は、「12月に州議会での票決によって州首相に就任する」と宣言した。AfDの議席数は、過半数に3議席足りない。だがAfDは、極左政党「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟・理性と正義(BSW)」の支持を得られれば過半数を確保できると見て、交渉を続けている。

 BSWは親ロシア、エネルギー転換反対、難民受け入れ拒否などについては、AfDの政策と重なる部分がある。極右と極左が、既存の政治体制を打破するために協力するという奇妙な事態だ。

 ジークムント氏の予言が実現すれば、ドイツの歴史で初めて極右政党に属する州首相が誕生する。地方分権を重視しているドイツでは、州政府が中央政界でも大きな影響力を持つ。


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