「自分たちがどういう旗の下に結集しているのかを明快にして、いつも『俺がこれをやる』と言いながら、トップが旗を持って進む。ほとんどの時間を仕事に費やして命がけでやっている姿を見せる。それは面倒くさいことです。でも、それで人はついてくる」
28歳で入社する前イスラエルに留学、人間は何のために生きているのかを自問してきた。どうせ生きるなら前例踏襲ではなく新しいことに挑み、乗り越えたいという人生哲学が小林には滲むし、掲げる旗は自信に裏打ちされている。口で言うだけで方法を示せない「丸投げ」リーダーに人はなびかない。さらには、「自分の言葉で語るチャーミングな人」(三菱商事化学品グループ・宮内孝久CEO)と評される、ユニークで端的な表現力も社員をその気にさせる。
忍び寄る危機を感じながら行動できない「ゆでガエル」。日本企業がその状況から脱してリスクをとるには、トップの戦略とともに、組織を動かす戦術が必要だ。戦略には歴史観とノスタルジーを断ち切る分析眼が、戦術には人間力の裏づけが求められる。
こうした要素が、日本の企業に存在しないはずがない。横並びに安住するなかで封印しているだけではないのか。小林が言うように。
「皆、政治が悪いと言えば済むと思っているが、冗談じゃない。悪いのは自分。2011年は、もっと自分を信じなきゃ。日本企業はポテンシャルを持っているんですから」 (敬称略)
◆WEDGE2011年2月号より
本誌では、以下の企業の事例も読むことができます。
○社員5人の町工場 自ら世界に売り込む 田代合金所
○栽培技術の輸出がぶどう農家の活路 秀果園
○イスラム圏に保険を 上司と部下の信頼感 東京海上日動火災保険
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
週に一度、「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。