「例えば《優勝選手の像》には、ギリシャ人の精神が表れています。「優勝選手」は今で言う金メダリストです。現代では金メダリストは壇上で派手な振る舞いをしますが、《優勝選手の像》は視線を落としています。これは内省的な仕草であり、節度を表しています。つまり、喜びを表すだけでは駄目なのです。特別な瞬間を神へ奉げる一種の感情表現です。この当時の金メダリストに与えられるのは、冠だけです。そして、自己の彫刻をゼウスの神域に置く権利を与えられる。一個人と判っていても、個性を超えた価値観が存在しました」。
勝利を喜ぶのではなく、「節度」を示す。知的なギリシャ人らしい。展示されているゼウス像を見ると、意外と小さい…。飯塚氏が、コピーについて説明してくれた。
「ゼウス像はオリンピアのゼウス神殿に祭られていて、高さ13メートル以上あったと言われます。このオリジナルは失われましたが、ローマ時代に多数コピーが造られたはずです。時代は代わっても、ギリシャ文化は残ったのです。ギリシャ人の彫刻職人もいました。三次元の座標を作って写す器械的なコピーの精度は、非常に高いものでした。ローマ人にとってギリシャ文化は憧れのまとであると同時に教養の証でもあり、ブームとなりました」。
紀元前、或いは紀元直ぐにそれだけのコピーの精度があったとは驚きだ。
展示はヘラクレス、スフィンクス、円盤投げと続いていく。ここで注目して貰いたいのは、その大きさだ。ディオニュソス(バッカス)像や《円盤投げ》の大きさの迫力には圧倒された。ポスターや写真では絶対に感じることのできない「大きさ」というものを、実際に体験して欲しい。
また、この展覧会に出品されている《後期スペドス型女性像》はヨーロッパの美術の歴史上、最重要な作品と言っても過言ではない。ヨーロッパの中世、近代、現代の美術作家は常にこの作品へ立ち戻っているのだ。
日本、アジア、ヨーロッパ、世界中の美術の源がここにある。夏休みを利用して家族で美術の、いや、文化の原点を体験しに行こう。大英博物館に行く手間が省けますよ!
「大英博物館 古代ギリシャ展 ―究極の身体、完全なる美―」
~2011年9月25日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時30分(金曜は午後8時まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(*ただし、8月15日、9月19日は開館)、7月19日(火)、9月20日(火)
観覧料金:1,500円(一般)、1,200円(大学生)、700円(高校生)、中学生以下無料。
交通:JR上野駅下車(公園口出口)徒歩1分
京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分
東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車 徒歩8分
お問合せ:TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
特設ホームページ:http://www.body2011.com/index.php
会場ホームページ:http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html
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