チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年9月27日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

 余談になるが、2年前のこの事件の半年ほど前、筆者はある国会議員を訪ねた際に、象徴的な嘆きの声を聞いたことがある。「尖閣諸島が何県にあるか? 本州、北海道、四国、九州の次に大きな島はどこか? こういった質問に即答できる人は国会議員のなかでも非常に少ない。わが国固有の領土についての無知・無関心が甚だしいのです」。多くの国会議員にとって「票に直結しない」領土の問題、あるいは外交・安全保障分野への関心は、情けないまでに低いのだと、この議員はこぼした。

海洋国家の自覚はあるか?

 ちなみに、本州、北海道、四国、九州の次、日本列島で5番目に大きな島は、択捉島である。択捉島は沖縄本島よりも大きい。この事実も多くの日本人に知られていないが、知ったら俄然、北方領土問題のもつ意味の大きさを実感できた、という人もいる。

 せっかくの機会なので列挙しておくと、日本列島全6852島のうち、人の住む島は437、残り6415が無人島である。尖閣諸島と呼ばれる5島も後者に含まれるが、うち最大の魚釣島にはかつて99戸、248人が住んでいた。

 人の住む島はもちろんだが、6400余の無人島もまた重要な意味をもつ存在だ。ところが、この期に及んでもなお、「ちっぽけな無人島など他国にあげてしまえばいい。そうすれば問題は解決するのでは」などという発言をする人がいることに驚く。しかも、なぜか日本のテレビはそういう発言者を好んで登場させるが、これは世界の常識から見ればとんでもない認識である。

 海に守られた島国に暮らす日本人は、他国と陸上で国境を接する他国の人々に比べて、領土意識がそもそも希薄である。ましてや世界に広がる海の上に境があり、ここからここまでがわが国のもの、といわれてもますますピンとこないのかもしれない。

 1994年に発効した国連海洋法条約により、沿岸から200海里を排他的経済水域(EEZ)とすることとなったことで、多くの島が点在する日本は一躍、世界6位の海洋大国となった(ちなみに陸地面積の領土は世界60位)。このことは資源に乏しいと思われてきたわが国にとってきわめて重要なことである。自国管轄の海であればこそ、魚を獲ったり、地下資源を採掘したりも自由にできる。逆にひとたび他国の管轄となってしまえば、最悪、そこで嫌がらせをされて、日常生活に欠かせない物資の輸入もままならなくなることも考えられるからだ。

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