チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年9月27日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

 世界6位の海洋国家の住民でありながら、その自覚がない。当然、それを守らねばならないという意識も希薄。こうした国民の心の中の無防備状態はむしろ、軍事・軍備を否定している現状以上に危ういことといえるかもしれない。

「尖閣特別授業」も時間の問題か

 中学校の社会科あたりで習ったことを思い出してほしいのだが、国家の要件とは、「領土、国民、主権」の3つがあること、である。言い換えれば、この3つを失えば国家たり得ず、失わないよう守り抜く、防衛するのが国家の構成員たる国民全員の責任でもある。

 防衛と聞けば即、軍事を頭に描く人が多いが、そうではない。国家防衛の第一歩は、教育を通じて、国家の正当性や価値を知らしめて国民意識を醸成し、国民の共有財産である「領土」の重要性とそれを守ることの重要性を知らしめることにある。

 ところが、日本にはこの種の教育がない。皆無ではないが、おざなりである。自国がいくつの島で成り立っているかを答えられる人は希少。半世紀以上もの間、他国に不法占領されている島がどれほど広いかさえ多くの国民がピンと来ていない。俗にいう「平和ボケ」の具体的症状といえるかもしれない。

 一方の中国では、この国民教育が歪んだ形で強烈に行なわれている。その中心軸が「反日」であり、しばしば事実がないがしろにされている。また、チベット人やウイグル人への行き過ぎた「国民教育」は、深刻な人権侵害をも引き起こす事態にもつながっている。

 先日テレビ番組で、韓国の小学校で「竹島」についての特別授業を行なっている様子が映し出されていた。正直、異様な光景に見えた。なぜなら、それは、事実を基に国土・領土への愛着、防衛意識を、学びを通じて醸成するというよりは、日本という敵国に対抗するための理屈を子供たちに刷り込んでいるようにしか見えなかったからである。韓国の竹島特別授業は、中国人が、共産党政権の描いた「歴史」の断片を言い立て、「日本人は歴史を知らないではないか」と強弁する光景に通じるものである。

 最近になって、尖閣諸島を「核心的利益」だと言い出し、「沖縄が日本であることに正当性はない」とまで言い出した中国が、子供たちに「尖閣特別授業」を必修させるようになるのも時間の問題かもしれない。

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