チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年9月27日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

 対する日本はどうだろう? 2年前の「漁船」体当たり事件から今日までに尖閣の島々と周辺海域の実効支配強化のための、有効な手立てを一つでも打ち出せたであろうか? 否。それどころか、この2年、政治の混迷が続いたために、海上保安庁の権限を強化する「改正海上保安庁法」さえも、先月(8月)末ようやく成立にこぎつけたという体たらくだ。

 中国も新政権誕生後の状況は不透明だが、先方を甘く見るべきではない。日本の外交筋では、中国は「尖閣は台湾のもの。台湾は中国のもの。したがって尖閣は中国のもの」という理屈であるから、台湾を介さずに中国自身が思い切った手に打って出ることは当面ない、との、一種の楽観論が聞かれるという。本当にそうだろうか?

岩一つも疎かにできない現実

 ここで本稿冒頭の話に戻りたい。日本には6852の島があり、どれひとつも重要だということはおわかりいただけただろうか。一方、島々の周りには多くの「岩」がある。岩は島ではないので、領海やEEZ、大陸棚の起点とはならない。ただ、たとえばその一つに強引に掘立小屋でも立てて人が居つけば話は変わって来る。

 先述の国連海洋法条約では、岩と島との違いは「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない」ことにある。人が住んでしまえば、「島」となる可能性もある。現に中国は、南沙諸島で岩礁に掘立小屋を立てて人を住まわせ、それを徐々に補強して、数年後には立派な軍事施設を立てるまでに変化させ、島のような状態を創り出した実績がある。

 尖閣諸島の周辺には総面積0.01平方キロにも及ぶ、大きな岩がある。南沙諸島の岩礁よりははるかに人が居つくには快適と思われる規模である。南沙諸島で実績のある中国人がある日突然、同じことをしでかさない保証はない。

 領土を守るためにはたとえ岩一つといえども疎かにはできない。この厳しい現実と向き合い続け、緊張感を保ち続けられるか否か。相手の出方を読みながら、半歩でも、実効支配強化を前進させるため、情報戦や法律戦における具体的な手を繰り出せるか否か。いま私たちは自らの心の中の備えを試されているのである。


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