2024年10月28日(月)

BBC News

2024年10月25日

イスラエルは23日、レバノンの歴史的な港湾都市ティルス(スール)に少なくとも4回の空爆を実施した。イスラエルは攻撃の数時間前に、同市中心部の複数の地区に避難勧告を拡大していた。

同市には、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録されている、ローマ帝国時代の遺跡がある。この日撮影された映像には、遺跡からわずか数百メートルしか離れていない海岸地域から立ち上る巨大な黒煙の雲が映っていた。

レバノンの国営通信社は、空爆によって家屋やインフラに「甚大な被害」が出たとしているが、死傷者の報告はない。

イスラエル軍は、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの、南部戦線本部を含む指揮統制室を標的としたと発表した。

イスラエル軍のアラビア語報道官は、イランが支援するヒズボラに「強硬手段」を取る予定の地域を、事前に地図で発表していた。

イスラエルの激しい空爆と地上侵攻を受け、すでに数万人の住民がここ数週間のうちに市内から避難していた。

しかし空爆が始まる前、同市の災害対策本部の広報担当者は、南部の他の地域から避難してきた人々を含め、市内にはまだ約1万4000人が居住していると語っていた。

ビラル・カシュマル氏はAFP通信に、「街全体が避難していると言ってもいいだろう」と述べ、多くの人々が郊外に向かっていると付け加えた。

住民のワエル・ファラージさんは、避難命令に従って家族とともに避難し、自宅が破壊されたという知らせを聞いたときには海辺にいたと語った。

ファラージさんはロイター通信に対し、「私たちは子供たちを連れて、持ち出せるものを手に取った」、「戻って来たら、家が崩壊していた」と話した。

「私たちはここにとどまり、しっかりと立ち向かう。このがれきの中に(中略)とどまるつもりだ」

別の住民、イッサム・アワドさんは、「みんなと同じように座っていたら、突然警告もなしに爆発が始まった」と述べた。

「幸運なことにみんな無事で、爆発でのけが人もいなかった」

イスラエル軍は、今回の空爆はヒズボラの活動を標的とし、その軍事能力の復活を妨害するための取り組みの一環だと述している

また、ヒズボラが組織的に民間地域や宗教施設を占拠し、レバノン国民を危険にさらすような攻撃を行っていると非難した。

レバノンの国営通信社であるナショナル・ニュース・エージェンシーは、イスラエルの航空機が23日にレバノン南部とベカー高原東部で複数の空爆を行ったと報じた。

これらの地域は、ヒズボラが強い影響力を持っている首都ベイルートの南部郊外と共に、一晩中、標的とされた。

イスラエル軍は、ベイルートでの空爆はヒズボラの武器貯蔵庫や製造施設、司令室を標的としたものだと発表した。

23日夜、親ヒズボラのテレビ局アル・マヤディーヌは、ベイルートのオフィスがイスラエル軍の空爆を受けたと伝えた。

イスラエル軍はさらに、過去数日間にジブチット、ジュアイヤ、カナといった南部地域における空爆で、ヒズボラの地区司令官らを殺害したと述べた。また、レバノン南部における作戦中に、ヒズボラのインフラと武器貯蔵庫を解体する中で、ヒズボラの戦闘員約70人を殺害したと発表した。

ヒズボラはすぐにはコメントを出していない。

一方で、23日にイスラエルにロケット弾を集中発射したと発表。これには、テルアヴィヴ北部にあるギラート情報基地を標的とした朝方の発射も含まれている。

テルアヴィヴではロケット警報サイレンが鳴り響き、訪問中のアントニー・ブリンケン米国務長官に同行していた高官らは、ホテルの安全な部屋に避難した。ブリンケン長官自身が避難を余儀なくされたかどうかは不明だ。

さらに別のロケット弾が、イスラエル北部のアッコとキリヤット・ビアラクにある2カ所の工場を直撃。被害は出たものの、負傷者はなかった。

その後ヒズボラは、次期指導者になると思われていたハシェム・サフィエディン師が、10月4日にベイルート南部でイスラエル軍の空爆により死亡したことを認めた。

サフィエディン師は、9月27日のベイルートでの空爆で死亡した、ヒズボラの前指導者ハッサン・ナスララ師のいとこだった。

ヒズボラは、パレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマスがイスラエル南部を襲撃した翌日の昨年10月8日から、ハマスを支援するとして、イスラエル北部にロケット弾を発射し始めた。

両国の境界線を挟んでの戦闘は1年にわたって続き、イスラエルは10月以降、ヒズボラに対する激しい空爆作戦と地上侵攻作戦を開始した。イスラエルは、ロケット弾によって避難を余儀なくされた住民数万人の安全な帰還を確保したいとしている。

レバノン保健省によると、同国ではこれまでに2500人以上が殺されており、そのうち1900人は直近5週間で犠牲となっている。イスラエル当局は、イスラエル北部と占領下のゴラン高原で59人が殺されたと発表している。

(英語記事 Israel strikes Lebanon's Tyre, close to site of ancient Roman ruins )

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cgqy892q2xyo


新着記事

»もっと見る