マット・マグラス環境問題担当編集委員
温暖化に関するかなり厳しい見通しが、ニュースの見出しを飾っている。国連が24日に発表した報告書によると、対策を講じなければ世界の平均気温が今世紀中に摂氏3.1度も上昇する可能性があるという。
しかし、実際にそうなる可能性はどれくらい高いのだろうか。
気候変動や科学的背景がそうであるように、その答えは複雑だ。
国連環境計画(UNEP)の最新の排出ギャップ報告書は、「現行の政策」のままなら世界の平均気温は今世紀中に最大3.1度上昇する可能性があると示唆している。
国連によると、これは世界にとって「破壊的」なもので、熱波や洪水などの異常気象が劇的に増加することになる。
この規模の温暖化が起きると、屋外での仕事は不可能ではないにせよ極めて難しくなるだろう。
ただ、今回示された数字は厳密には新しいものではなく、前後関係を踏まえて考える必要がある。
国連の気温上昇予測は、2021年に英グラスゴーで、気候変動対策を協議する国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開かれてから3年間、基本的に変わっていない。
最新の報告書は、「現行の政策を継続した場合、今世紀中の地球温暖化は最大3.1度(振れ幅1.9~3.8度)に抑えられると推定される」としている。
この数字は、2021年に出された、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書の予測に沿ったもの。IPCC報告書では、温室効果ガス排出量がより高水準だった場合、世界の平均気温が今世紀中に最大3.6度上昇すると示されていた。
24日付のUNEP報告書は、炭素削減計画においてすでに合意している対策を各国が実行に移した場合、気温は2.6~2.8度上昇するとしている。
また、すべての国がこれらの計画を実行に移し、炭素排出量を差し引きゼロにする既存の「ネットゼロ」誓約を継続すれば、気温上昇を1.9 度に抑えられるとある。
気温上昇をより小さくできるというこれらのシナリオは、確約には程遠いものであることは明らかだ。そしてはっきりさせておきたいのは、1.9度の上昇でさえ破壊的なものであるということだ。私たちはこれまでに地球を1.1度熱くさせており、異常気象の増加や海面上昇など多くのレベルでその影響を感じている。
約束と不満
こうした気温上昇予測に一向に変化がみられないことは、国連をいらだたせている要因の一つだ。COP27(2022年)やCOP28(2023年)で各国は温暖化を食い止めるための取り組みを約束した。しかし、現場レベルでの行動は非常に遅れている。
国連報告書は、世界の気温上昇を2度未満に抑えつつ、1.5度未満を維持できるよう努力するとするパリ協定の目標は、いまや深刻な危機に直面していると指摘している。
しかし一方で、数週間後に各国の政治指導者たちがアゼルバイジャンでのCOP29に臨むというタイミングで今回の報告書が出されたことを、念頭に置くことは重要だ。
各国は来春までに新たな炭素削減計画を議論のテーブルに上げることで合意している。これらは2035年までの10年間に関する計画だ。
それまでに排出量を抑えられなければ、3度前後あるいはそれ以上の極めて厳しい気温上昇が起こりうると、科学者たちは考えている。
国連の気候変動担当責任者は、「国が決定する貢献」と呼ばれる次なる一連の計画を、今世紀に作成された文書の中で最も重要なものの一つと評している。
つまり今回の報告書は、世界の指導者たちにより高い野心を持たせるための後押しの一環だと見なされる必要がある。
報告書の内容、ほかに新しいものは?
報告書にはほかに新しい内容はあるのか?
国連によると、排出量を押し上げる新たな要因は多数あるという。
例えば2023年には航空機の利用が急増し、航空機の二酸化炭素排出量は前年比19.5%増加した。
陸上輸送による排出量も増加したが、気候変動の影響など主要因はほかにもある。気温上昇により、人々はエアコンにこれまで以上に頼らざるを得なくなっている。
UNEPのアン・オルホフ博士は、「気候変動のより深刻な影響を我々は目の当たりにしている、あるいは目の当たりにしつつある。熱波は家庭やオフィスの冷房のためのエネルギー需要を増加させている」と述べた。
「水力発電にも影響を及ぼし、発電量は減少している。発電量が減少したらどうするか? 石炭火力発電に切り替えることになる」
もう一つの要因には、自動車と暖房の電動化があげられる。電気自動車やヒートポンプが増えることで電力需要が高まっている。この需要を満たすには多くの場合、化石燃料が使用される。