米ニューヨーク中心部の路上で医療保険大手のトップが銃撃され死亡した事件をめぐり、殺人罪で起訴された被告をたたえる意見がソーシャルメディアで目立っており、保安当局が警戒感を示す状況となっている。こうしたなか、被告は23日に裁判所に出廷し、無罪を主張した。
米保険会社ユナイテッドヘルスケアのブライアン・トンプソン最高経営責任者(CEO、50)は今月4日朝、ニューヨーク・マンハッタンのミッドタウンにあるヒルトンホテル前の路上で、背中などを撃たれて死亡した。
警察は9日、ルイジ・マンジョーネ被告(26)を重要参考人として拘束。その後、連邦とニューヨーク州の両方の当局が、殺人罪などで起訴した。
当局は、マンジョーネ被告が米医療業界に怒りを募らせていた証拠があるとし、トンプソン氏を狙った殺人事件とみている。
連邦政府によると、被告が所持していたノートには、「医療保険業界と裕福な幹部に対する敵意」が記されていたという。
国土安全保障長官が英雄視を警戒
こうしたなか、ソーシャルメディアでは、今回の犯行を称賛する意見や、米民間医療保険に対する怒りの声が出ている。
アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は22日、こうした発信について、「非常に警戒すべき」だと、BBCがアメリカで提携する米CBSの番組で発言。
「この国で沸き起こりつつあることを物語っている」、「そして不幸なことに、それが暴力や、国内の暴力的な過激主義として現れているのを目の当たりにしている」と述べた。
また、「ニューヨークの路上で2人の子どもの父親を殺害したとされる人物が英雄視されていることに警戒している」と述べた。
州裁判で無罪を主張
マンジョーネ被告は23日、ニューヨーク州の裁判所に出廷し、殺人やテロなど11件の罪状について無罪を主張した。
すべてで有罪となれば、仮釈放の可能性のない終身刑となる。ニューヨーク州は死刑を廃止している。
法廷には報道関係者らに加え、一般市民らの姿もあった。そのほとんどが若い女性だった。そのうち何人かはCBSに、被告への支持を示すために来たと話した。
被告に対しては連邦検察も、殺人のために銃器を使用した罪と、州をまたぐストーカー行為で死に至らしめた罪で起訴している。これらの罪は共に、死刑となる可能性がある。
連邦検察の起訴内容については、被告はまだ認否をしていない。
検察側は、連邦と州の裁判は並行して進められるとしている。
マンジョーネ被告の弁護士カレン・フリードマン・アグニフィロ氏は先週、州と連邦の罪状は矛盾していると思われると法廷で主張。州の罪状は被告が「地域の全住民をおびえさせ、または抑圧」しようとしたとしている一方で、連邦の罪状は個人に対する犯罪に焦点を当てているとした。
そのうえで、二重の裁判は「混乱を招く」ものであり、「極めて異例」だと述べた。
(英語記事 Luigi Mangione pleads not guilty to murdering healthcare CEO/Heroism attributed to CEO murder suspect is alarming - Mayorkas)