イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は23日、イスラム組織ハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤ政治局長を、イスラエルが7月にイランの首都テヘランで殺害したと述べた。イスラエル側がハニヤ氏の殺害を認めたのは初めて。
カッツ国防相はこの日、イスラエルに対してミサイルやドローン(無人機)を発射しているイエメンの武装組織フーシ派の指導者を標的にすることを誓う演説の中で、ハマスのハニヤ政治局長殺害について発言した。
ハニヤ氏は7月、テヘラン市内の建物に滞在していたところ、攻撃を受けて死亡した。この攻撃はイスラエルによるものと、広く受け止められていた。
こうした中、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスとの戦闘を続けるパレスチナのガザ地区における停戦の合意について、一定の進展があったと述べた。ただ、合意がいつごろ実現するのかについては言及しなかった。
パレスチナの高官は先に、ハマスとイスラエルの間で、停戦と人質解放の合意に向けた協議が90%完了したと、BBCに説明していた。この高官によると、いくつかの重要問題について、まだ解決が必要だという。
敵対勢力の指導部を「排除」すると
カッツ国防相は演説で、イスラエルはフーシ派を「激しく攻撃」し、その指導部を「排除」すると述べた。
「テヘランやガザ、レバノンで、ハニヤや(ハマスの最高指導者ヤヒヤ・)シンワル、(レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ハッサン・)ナスララに対して行ったことを、(イエメンの)フダイダとサアダでも行う」と述べ、今年殺害したヒズボラとハマスの指導者に言及した。
ハニヤ氏はハマス全体の指導者と広く考えられていた。ガザ地区での停戦を目指した交渉では重要な役割を果たしていた。
ハニヤ氏殺害を受け、ハマスは後任にヤヒヤ・シンワル氏を選出した。シンワル氏はガザ地区における指導者で、昨年10月7日のイスラエル襲撃の首謀者の一人だった。
そのシンワル氏も今年10月、ガザ南部でイスラエルのパトロール隊と偶然遭遇し、殺害された。ハマスは現在も、シンワル氏の後任の人選を進めている。
イランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師は、イスラエルが対ヒズボラ軍事作戦を激化させた9月、レバノンの首都ベイルートで暗殺された。
昨年10月のハマスによるイスラエル襲撃後、ヒズボラは自分たちと同様にイランの支援を受けるハマスへの連帯を示し、イスラエルに対する攻撃を開始。以降、ヒズボラとイスラエルはレバノンの境界線を越えて交戦を続けてきた。
同じくイランの後ろ盾を受けるイエメンのフーシ派は、イスラエルがガザ地区でハマス壊滅作戦を開始して間もなく、イエメン沖の紅海で、イスラエルとつながりのある船舶などを標的とした攻撃を始めた。
フーシ派は、ガザでの戦闘が終わるまで、紅海での攻撃を続けるとしている。
イスラエル軍は21日、イエメンから発射されたミサイルを撃墜しようとしたが失敗し、イスラエル・テルアビブの公園に着弾させたと発表した。フーシ派のスポークスマンは、極超音速弾道ミサイルを使ってイスラエルの軍事目標を攻撃したと発表した。
先週にはイスラエルが、フーシ派の軍事目標だとするものへの攻撃を開始。イエメンの首都サヌアの港湾や、エネルギーインフラを攻撃した。アメリカとイギリスも、国際海運を守る作戦の一環として、フーシ派を攻撃している。
ハマスは昨年10月のイスラエル南部襲撃で、約1200人を殺害し、251人を人質にとった。
これを受けて、イスラエルはハマス壊滅を掲げてガザでの軍事作戦を開始。この戦闘は1年以上が過ぎた今も続いている。ハマス運営のガザ保健省は、ガザで4万5317人が死亡したとしている。
ハマス側によると、この数字には、過去24時間にイスラエルの攻撃で死亡した58人も含まれる。現地の医療関係者によると、イスラエル軍が「安全地帯」に指定したアル・マワシに3度の攻撃があり、少なくとも11人が死亡したという。イスラエルはハマス戦闘員を標的にしたとしている。
イスラエルは23日、ガザ北部で自軍の兵士3人が死亡したと発表した。
壊滅的な人道状況
人道支援団体や権利団体は、ガザ市民が壊滅的な状況に陥っていると警告している。
国際NGOオックスファムは、過去2カ月半の間に、ガザ北部で食料や水を配給したトラックはわずか12台だったとし、イスラエル軍が支援を「意図的に遅らせ、組織的に妨害」していると非難した。
「これらのトラックのうち3台は、市民が身を寄せている学校に食料と水が届けられると、数時間以内に撤収させられ、砲撃を受けた」と、同NGOは付け加えた。
イスラエル当局は、こうした報告について、「ガザ北部でイスラエルが行った後半な人道的取り組み」を「意図的に、不正確に」無視していると指摘した。
イスラエルは、ベイトハヌーン、ベイトラヒア、ジャバリアを含むガザ北部地域に「食料や水、医薬品を含む」特定の物資が届けられたと主張した。イスラエル軍は数カ月前から、ガザ北部で再編されたとするハマス戦闘員を標的とした軍事作戦を行っている。
ガザの人道状況をめぐっては、国際人権団体アムネスティがイスラエルを、ガザでジェノサイド(集団虐殺)を行っていると非難。ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)もイスラエルを、意図的にガザのパレスチナ人が十分に水にアクセスできないようにして「ジェノサイド行為」を犯していると非難している。こうした中で、オックスファムの報告書が発表された。
イスラエル外務省はアムネスティの報告について、「まったくの虚偽で、うそに基づくもの」だとした。同省の報道官はHRWについても、「またしても、血の中傷を広めている。(中略)真実はHRWのうそとは正反対だ」と述べた。
(英語記事 Israel confirms it killed Hamas leader Haniyeh in Tehran)