2024年4月29日(月)

Wedge REPORT

2024年2月22日

 元日に北陸地方を襲った最大震度7の能登半島地震により、近い将来に発生が予想されている大規模地震に対する防災対策がクローズアップされている。中でも都心部に密集して林立しているマンションの対策は急務だ。高度成長期に建てられたものは老朽化し、大規模な修繕を迫られるマンションが急増する。防災対策と長寿命化をどうやって進めるのか、マンション管理の現状を報告する。

(BEE32/GETTYIMAGES/gettyimages)

自主防災に動き始めた
マンション

 大地震などが起きた時は、避難所スペースが限られるため、大都市ではマンションの中にとどまった方が安全とされている。東京都港区芝浦にあるタワーマンションの「芝浦アイランドケープタワー」(1096戸、48階建て、2006年完成)は、一つのフロアに25世帯前後が居住しており、食料や水は自助が基本だが、3日分の備蓄を各階に設けている。エレベーターは17基あるが、大地震発生時には1基だけ緊急用に非常電源で稼働させる。各階ごとの安否確認を行う防災訓練は、トランシーバーを使った安否確認が主で、参加者増を狙って子どもや大人向けのイベント、マルシェなども開催しているが、参加者は住民総数の1割の130人程度。防災担当者の悩みのたねは、訓練にまったく出てこない人がいることで、居住者の参加を促したいことだという。

 港区三田にある「シャンボール三田」(324戸、13階建て、1978年完成)では、2016年に非常用電源を更新して、震災時にはエレベーター1台は3日間稼働するなどハード面の防災対策を行ってきた。昨年12月には防災訓練の一環としてマンション全体で安否確認を行った。半数の住民が参加し、安否が確認できたらドアの外に「無事」の表示をしてフロアごとに集計を行い、30分ですべての安否確認ができたという。

 この2つのマンションは、ハード、ソフト両面の活動が評価されて、停電時でも自宅での生活を継続しやすい「東京とどまるマンション」として東京都に登録された。そうすると、簡易トイレや、エレベーターに設置する防災キャビネットなどの防災備蓄資器材の購入補助が受けられる。1月末現在、214のマンションが登録している。

 東京都は2030年度までに、首都直下地震などによる人的・物的被害を、最大死者数約3000人、最大建物被害約10万棟までとする目標を立てて取り組もうとしている。

 東京都総務局総合防災部の濱中哲彦防災計画課長は、減災の具体策として「住宅の耐震化、不燃化の促進や延焼遮断のための特定整備路線の整備、出火防止のための感震ブレーカーの普及、水道管の耐震継手化、区市町村と連携したトイレ対策の推進などについて、それぞれ目標を定めて取り組んでいる」としている。


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