2024年11月21日(木)

都市vs地方 

2024年2月15日

 能登半島地震では、地震そのものの被害も甚大であったが、その後の避難生活にも大きな影響が見られた。水道を中心としたライフラインの復興が長引くにつれて、自宅での避難生活や避難所での生活で体調を崩す被災者が心配されている。

被災地は高齢者も多く、特別な配慮も必要となっている(出所)統合幕僚監部「令和6年能登半島地震に係る災害派遣」

 石川県は2次避難(災害で避難をした場所からさらに別の安定した場所に避難をすること)を促進し、被災者の環境を改善しようと努めている。

 災害時に問題になるのが、より細やかなケアが必要となる高齢者である。高齢者は、自宅環境と異なる不自由な避難所の暮らしや、日ごろから受診している医療機関への通院や薬の入手などの問題を解決しなければならない。

 この問題は高齢者自身にも不便さをもたらすだけでなく、家族の支援や介護の負担を増すことも懸念される。また、避難所ではなく自宅で何とか生活を維持しようとしても、買い物などの外出や給水車へ水を受領しに行かなければならないなど、高齢者だけでは十分に対応できない事柄も多く存在する。

 前回の記事「能登半島地震で目を引く家屋倒壊耐震建築の状況は」では、家屋の耐震対応というハードの側面から災害のリスクについて見てみた。それに対して今回は、災害時により細かなケアが必要となる高齢者の存在に焦点を当て、社会的な生活面から災害のリスクについて見ることとする。

高齢化率だけではわからないこと

 今回議論の対象とした、地域における高齢者の割合をしる端的な統計としては、高齢化率を上げることができる。高齢化率とは、高齢者数を地域の全人口で割った値で、以下のように表される。

 この高齢化率は地域の占める高齢者の比率を表すため、高齢化率が高いということは、災害時にケアされるべき高齢者がそれだけ多いということを意味する。しかし、被災後に生活を維持することや、2次避難する場合に、単独で暮らす高齢者や高齢者だけで暮らす世帯は、身の回りで生活を支援できる同居家族がいないため、なおいっそう災害後に不便な暮らしに直面することになる。

 そこで、ここでは人数ベースで算出される高齢化率の指標に代わって、高齢者だけが住まう世帯ベースでの統計を見ることで、地域の被災者対策について考えてみたい。人数ベースの統計と世帯で見た統計の違いは以下のように表すとわかりやすいであろう。

 図1では、が高齢者、が64歳以下の人口とすると、Aは夫婦二人と子ども二人の世帯、Bは高齢者と若い夫婦の同居世帯、Cは高齢者単独(一人暮らし)の世帯、Dは高齢者夫婦のみの世帯を表す。ここで、人数ベースでの高齢化率を取ると、=4、()=10で、4/10=40%となる。

 次に高齢者のいる「世帯」で考えるとB+C+D/(A~D)=3/4=75%となる。また、世帯Bの高齢者は同居する若年者によるケアが可能であるとすれば、注目すべきは若い世代の同居家族のない世帯CとDであるから、この場合には指標はC+D/(A~D)=2/4=50%となる。いずれにしても、単純な人数ベースの高齢化率の統計よりも大きな値となっていることが分かる。

 人数と世帯で高齢者の比率に違いが出るのは、図1の世帯Aの若年世代が4(人)としてカウントされずに1(世帯)としてしかカウントされないことによる。若い世代が勤労し、税や社会保険料を負担し、政府が社会保障を通じて高齢者世帯を支援する場合には、社会全体での人数比が役に立つ指標といえる。しかし、ある世帯に若い世代が複数いても、他の世帯の家族を直接には支援できない災害時の状況を考える場合には、人数比よりも世帯ベースの方がふさわしいといえよう。


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