さて、このような観点から、高齢者のみで暮らす世帯が実際にどの程度の割合で存在するのかを見る場合には、『国勢調査』(総務省統計局)の結果が有用である。国勢調査では一般世帯のうち65歳以上世帯員のみの世帯数(図1のCとD)を知ることができる。この世帯ベースの比率と一般的な高齢化率を比較して示したものが表1である。
表1を見ると、基本的にどの都道府県でも人口ベースで見た高齢化率よりも世帯ベースで見た高齢者のみ世帯率の方がその値が大きくなっていることが分かる。これは各地域で若年者の世帯と高齢者の世帯の分離が進んでいることを示す。両者の差は東京都を除いて10%ポイント以上あり、最も差が大きかったのは山形県であった。
表中で黄色で示した地域は、世帯ベースで見た高齢者のみ世帯率が50%を超えている地域であり、災害が起こればより手厚くケアするべき高齢者だけの世帯が地域の過半を占めていることを意味する。これらの地域には東北地方、今回の能登半島地震で被害を受けた新潟県・富山県、そして東南海地震が心配される和歌山県が含まれる。
次に、表中で薄赤で示した地域は世帯ベースで見た高齢者のみ世帯率が人口ベースで見た高齢化率よりも1.5倍以上となっている地域である。これらの地域で防災対策を検討する場合には、高齢化率ではなく高齢者のみで暮らす世帯の比率も考慮して考える必要があるといえる。
地域間格差と地域内格差
表1では、都道府県を単位として高齢者のみで暮らす世帯の比率を問題としてきた。そこでは、最もこの比率が高い県としては秋田県(57.5%)であり、最も低い地域は東京都(29.5%)であった。
両者の差異は30%ポイント近くにも達している。続いて以下では、都道府県間の格差より深く分け入って、都道府県内の市町村を単位にその差異を問題とする。
表2は今回の能登地震で中心的な被害を受けた石川県内の市町村での高齢者のみで暮らす世帯の比率を示したものである。
表2を見ると、石川県全体で見た高齢者世帯比率は44%であるが、今回大きな被害が伝えられている輪島市では地域のほぼ70%、珠洲市では地域の75%超の約77%が高齢者だけで暮らす世帯が占めることが分かる。このことから、地震発生時の避難の面、その後の避難生活の維持、2次避難等において高齢者だけで対応しなければならない世帯の比率が多く、大変な苦労が予想される。