2024年12月9日(月)

Wedge2023年9月号特集(きしむ日本の建設業)

2024年1月17日

能登半島地震では、降雪や寒さにより被災地の復旧・復興や被災者の生活を厳しくする。実はこうした街中の積雪への対応は建設業者が担っている。「Wedge」2023年9月号に掲載されている「きしむ日本の建設業 これでは国土が守れない」記事の内容を一部公開いたします。

 今日も岩手に雪が降る。それは決して特別なことではない。雪によって閉ざされた道は、いつの間にか開かれる。それはきっと特別なことだ──。岩手県建設業協会青年部が制作した動画「The Mission~いつもの朝をむかえるために~」の一節だ。

大雪の翌日、通勤・通学が可能なのは〝当たり前〟ではない(IWATE PREFECTURE KENSETSUGYO KYOKAI)

 雪が降る寒冷地において、冬場の「除雪」は日常生活を送る上で欠かせない作業である。県内で除雪の対象に指定されている道路の総延長は約2万1700キロメートル、およそ地球半周分にも及ぶ。同協会の村上純也総務・企画総括課長は「豪雪地では真冬になれば毎日のように雪が降る。通常の仕事が終わった後、翌朝の通勤・通学に支障がないよう、夜間に作業することが多いので、建設会社が除雪していることを知らない人も多いですね」と話す。

 近年では、苦情の数も増えているという。「音がうるさいとか、作業が遅いとか……。要望としては十分理解できますが、実際に作業する者の身にもなってほしいという思いはあります。就寝後、夜中に何度か起きて積雪状況を確認するし、晩酌だって控える。就寝時間が早いため、冬場には家族とのコミュニケーションが減るという人が少なくありません」。

 別の問題もある。除雪に使う機械は、除雪にしか使えないものが多く、1年の半分以上は出番がない。メンテナンスや維持費がかかるので、新しい機械を購入する会社は少なく、手放してしまう例もある。

 高齢化も追い打ちをかける。「除雪のオペレーターはかなり特殊で、操作技術と合わせて道路の特徴を把握している必要があります。マンホールや橋梁の接続部など、傷つけると大きな事故につながる設備があるからです。除雪時は雪で埋もれているので、そうした場所も頭に入れておかなければなりません。ですが、若い人が入ってこないのが実情です」(村上課長)。


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