2024年11月22日(金)

都市vs地方 

2024年2月15日

 次に、都道府県内の市町村を単位に地域内格差を見ることとする。

 図2は、高齢者世帯のみの比率の分布を都道府県ベースと全市町村ベースでプロットしたものである。どちらも全体を100%として分布を表したものである。

 これを見ると、都道府県ベースでは多くの地域が50%前後にあり、これで全体の7割近くを占めていることが分かる。しかし、市町村ベースまでブレークダウンすると、山のすそ野が広がり地域によるバラツキは大きいことが分かる。また、最頻値の50%を超え70%台まで多くの自治体が分布していることが分かる。

 都道府県の値は、いわばその都道府県内の市(区)町村の平均値を示しているといえる。実際にはその同一都道府県内でも、市町村間でさらに大きなバラツキがあるということになる。

 表3は全市町村のうち、高齢者のみ世帯比率が75%以上の市町村を示したものである。これらの市町村では地域の3/4以上の世帯が高齢者のみとなっており、災害時の支援計画に十分な準備が必要とされる可能性のある地域である。

 表の中で市である自治体は石川県珠洲市のみであり、その他の地域はいずれも町村である。また、表中の水色で示された地域は東北地方の町村であり、山形県の町村が多く含まれていることも特徴としてあげられる。

高齢者のみ世帯の意義と災害時の対策

 これまで議論した中で、高齢者のみで住まう世帯の比率が高いことは、防災上のリスクが懸念されることを示した。ただし、高齢者のみで住まう世帯の存在は必ずしもネガティブな地域社会を意味するわけではない。

 人生100年時代と言われ、健康で元気に自立して暮らすことのできる高齢者の増加により、高齢者だけで居住できる世帯が増えてきたというポジティブな面も指摘できる。

 しかし、ここでは災害時という特別な事態において、高齢者だけで被災後の生活を維持、あるいは避難生活を送る場合に、平常時では障害とならなかったことが負担となることがありうる。例えば、がれきの処理ができなかったり、不自由な避難生活を原因として健康を崩したり、もとの生活に戻るまでに多大な時間を要することが予想される。

 この場合に、1つは図1の説明で示した通り、地域の若い世代が存在する世帯が、世帯の枠を超えて地域の高齢者をケアできるようにすることである。このような、地域の中での住民相互間の関係は、本シリーズの「東京で多い孤独死 ソーシャル・キャピタルが解決のカギ」で「社会資本」としてとりあげた。

 第2は、域外からのボランティアなどの人的資源の投入である。第1が狭い地域での「社会資本」とするならば、第2は地域を超えた日本全体に存在する「社会資本」ということができる。この意味からすると、高齢化が進み災害が頻発する現在の日本において社会資本を充実することは極めて重要といえる。

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