2026年9月28日(月)

トランプ2.0

2026年9月28日

「薬価引き下げ」「データセンター建設」「キャラクター・アサシネーション」

2024年1月(バイデン政権)デトロイト周辺におけるレギュラーガソリンの平均価格は1ガロン約3.06ドルであったが、現在(2026年9月5日)は4.99ドルであった(デトロイト、筆者撮影)

 エルサイードと本選で戦う共和党連邦上院議員候補は、63歳の元連邦下院議員ロジャーズである。ロジャーズは元FBI(連邦捜査局)の特別捜査官でもあり、トランプの強い支持を受けている。

 民主党は、ロジャーズが南部フロリダ州にある邸宅を拠点にして、SNSを発信するなど、地元ではなく同州から選挙運動をしていると批判をしている。

 また、エルサイードは、ロジャーズが大手製薬会社から大口献金を受けたと非難をしている。ロジャーズは、連邦政府が製薬会社と医薬品の価格交渉(引き下げ)を行う法案に、過去に反対した。エルサイードは、その投票履歴を取り挙げ、ロジャーズを「製薬会社のロビイスト」と呼び、薬価引き下げを阻止していると激しく追及している。

 ロジャーズはこれに対し、自分は公式のロビイストではないと反論、“ロビイスト”という言葉を使用しないように停止要求書を送付するなど、泥仕合となっている。薬価の問題は党を超えて、高齢者の有権者の大きな関心事である。

 他に、エルサイードの対ロジャーズの有効な攻撃材料は、データセンターを巡る問題である。エルサイードは、ロジャーズとその妻がデータセンターの拡大等から利益を得るテック企業等の投資資産を最大で260万ドル(約4億円)保有していると非難している。ロジャーズはデータセンターの認可手続きを迅速化する政策を支持してきたが、投資資産保有が非難の的になると、データセンター建設の「1年間のモラトリアム(凍結)」を発表した。

 その背景には、ミシガン州民のデータセンターに対する否定的な意見も影響している。地元のテレビ局ローカル4と有力紙デトロイト・ニュースの同州民を対象とした共同世論調査(2026年8月31~9月3日実施)によれば、「ミシガン州におけるデータセンターの建設を支持しますか、反対しますか」という質問に対して、「支持する」が18.9%(「強く」と「いくらか」の合算)、「反対する」(同)が64.3 %、「分からない」が16.9%であった。「反対する」が「支持する」を約45ポイントも上回った(図表1)。

 データセンター建設は、共和党と民主党の壁を越えた争点になっている。すでにコミュニティーに建設されたデータセンターから聞こえる冷却ファンや空調設備による「低周波音」により睡眠障害を引き起こすなど健康を害する有権者や、所有地・家屋など自己の不動産価格の低下で強い不満を持つ有権者がいる。

 共和党支持者の中には、エルサイードの宗教や争点の立場に賛成できず、彼に投票をしない者もいるかもしれないが、同時にロジャーズのデータセンター推進の立場に反対して投票に出向かない有権者も出てくる可能性がある。そうなれば、共和党の票を減らすことができ、エルサイードに有利に働くだろう。

 エルサイードからの上記の攻撃に対してロジャーズは、ミシガン州のテレビ広告で「彼(エルサイード)は、従来の民主党員とは違い一風変わったタイプだ。危険だ」と、エルサイードの人格攻撃を繰り返すと同時に、民主党の分断を狙っている。こうした人格を攻撃したり、人物像を歪めて強調するような戦略は「キャラクター・アサシネーション(人格攻撃・人物破壊)」と呼ばれる。

 その狙いはどこにあるのか。

 民主党支持者がロジャーズに投票をする可能性は極めて小さい。しかし、エルサイードを従来の民主党員とは異なって危険人物として描けば、民主党支持者の中に彼に投票しない者が出てきて、民主党の票が減る。ロジャーズのテレビ広告の意図はそこにある。


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