「昨年までならゴールデン・ウィーク前までにほとんど片が付いたが、今年は5月末でもまだ決まっていない学生が多い」と、ある中堅私大工学部電気電子工学科の教授は嘆く。
電気・電子・情報系学科(以下電気系)でこうした異変が起きているのは、企業の採用数大幅抑制の影響だ。NECが2010年春入社の採用数を前年比で88%減らすほか、電機大手7社は合計で3割削減。エレクトロニクス業界では寒風が吹き荒れている。
とはいえ、就職に強い工学部のなかでも、もっとも強い電気系は、逆境にも耐えられるようだ。電力、NTT、鉄道などインフラ系の採用意欲は旺盛だし、設備系企業(インフラ企業の下請け施工会社やエレベータ管理会社など)や、印刷、食品、素材など、例年は電機業界の大量採用で採れない業種からの引き合いが強まっているからだ。「“電気”のイメージがない食品業界だが、製造ラインの管理構築などで優秀な電気系学生を欲している」(業界関係者)というように、いまの時代、製造業で電気系のいらない業種はない。
「長期戦は覚悟しなければいけないが、業種を選ばなければ、最終的には良い会社がみつかると思う」と、電気系学科の就職担当教授は口を揃える。
訴求力を失った電気
このように就職に強い電気系だが、学生からの人気はこの10年ほど低迷を続けている。何年も理系離れ、工学部離れが指摘されているが、なかでも苦しむのが電気系だ。
05年の「東大ショック」は大学、企業関係者を驚かせた。東京大学は入学時点では「理科Ⅰ類」などとおおまかにしか専門が決まっておらず、2年生前期終了時に本人の希望と成績に応じて3年生以降の進学先が決まる。05年秋に実施された06年度進学振分けで、電気系学科の最低点が60点を下回り(50点未満は「不可」のため、50点台は単位が取れるギリギリの点)、「希望すれば誰でも行ける」ような状態に陥ったのだ。09年度進学(08年秋実施)では、なんとか人気を保ってきた情報系コースまでもが40枠に対し応募が42人と「底割れ」寸前になっている。