しまうま? きりん?
仲間を説得できるかな?
まずはこの活動に向けて子どもたちの意識を高めることから第2学期は始まる。それが9月早々に行われるグループの名前決めだ。それまでは赤・黄・青・緑と色で分けられていたグループ名を、別の呼び方に変えることになっている。そして、その名前の付け方は子どもたちが話し合いで決めるのである。ここで先生が動物の名前をグループ名にすることを提案すると、子どもたちは喜んで賛成する。しかし、ここからが子どもたちにとっては未体験ゾーン。話し合いで合意を形成していくプロセスがなかなか難しい。
先生の「仲間とグループ名を決めてね。決まったら教えてね」の一声で話し合いを始める子どもたち。それを見守っていると、毎年必ずこんなやりとりがあるという。
子ども:「先生、決まった!」
先生 :「仲間もいいよって言った?」
子ども:「あっ、まだだった…」
こうしたやりとりを通じて、子どもたちは自分の意思を決めるということと、仲間の合意をとりつけるということのギャップを埋めていく。そして、ある名前に思い入れを持った子どもは、別の意見をもった仲間を説得し始める。
「しまうまがいいよ。だって、しまうまはしましまなんだよ!」
「図鑑にもいっぱい載ってるんだよ!」
傍で聞いている先生は、必死で笑いをこらえながら子どもたちの「口説き」を見守っている。そして紆余曲折を経ながら、なんとか合意が形成されていく。(ちなみに、このケースでは「しまうまって歌にも出てくるんだよ!」が殺し文句となった)
子どもの感性を高めるために
大人ができること
次に用意されているのが動物園見学だ。今までも再三ご紹介してきたように、風の谷幼稚園では「現実感」を大切にする。動物をテレビで観てもインターネットで調べても、そこで得られるバーチャルな情報だけでは十分に心を動かせない。つまり感動できる心や好奇心を育てるには、現物に触れる機会を創り出すことが欠かせないのである。
また、動物園に行く前日、子どもに動物の絵を描かせるのも大切な過程だ。たとえば、大人でもしまうまの絵をちゃんと描ける人は少ないだろう。ましてや4歳の子どもたちにとっては「?」の連続。なかなかうまく描けない。しかし、プロセスを経ることで、子どもたちには「見る視点」がつくられる。つまり、「ここはどうなっているんだろう?」「こうなっているんじゃないだろうか?」と興味のポイントが絞られてくる。
このような状態で動物園に向かうことが重要なのだ。移動のバスの中で想像力をフル稼働させ、現物との出会いに感動し、新しい発見に胸を躍らせるためのお膳立てなのである。