2024年12月23日(月)

風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2009年12月31日

 「たてがみもしっぽもしましまだ~」

 「でもお腹は白だね」

 「おしりのところは縦じまじゃない」 …

「象はグレー? 茶色?」 あらかじめ疑問を投げかけておくことで、動物園で子どもたちが動物を見る「視点」が定まる。

 この細やかで正確な観察には大人も脱帽だが、この子どもたちの鋭い感性は先天的なものではなく、やはり教育の力だろうと思う。

 そして、「どうぶつ」に対する興味が最高潮に高まったところで、いよいよ4人ひと組になっての「大型どうぶつ作り」が始まる。しかし、初めての共同作業に取り組む子どもたちにとっては難関だらけだ。いや、敢えて教育的見地から難関が用意されていると言う方が正確だろう。

 まず、冒頭で示したように、あえて道具は人数分用意しない。子どもたちはこの現実を理解するのが一苦労だ。

 「ぼくのがない」

 「わたしの分が足りない」…

 事前に4人グループで動物をつくるということを知らされていても、いざ作り始めると“みんなでつくる”ということが十分理解できてないのである。この時点では、まだ個人のことで精いっぱい。共同作業ということにまで思いが及ばない。

 ここで先生の出番となる。先生から道具をグループ内で使いまわすよう教わりながら、子どもたちは秩序やルールという概念を体験的に獲得していく。そして、道具を使って作業をする人になったり、道具を使う人を支える人になったりと、立場や気分の切り替えをも体感していく。

 「この『大型どうぶつ作り』では、仲間の中で、仲間と支え合いながらどうやって1つのものを作り上げていくのかを大事にしています。この活動は相手の気持ちを考えて、その気持ちに寄り添える、そんな関係づくりができる人間に育てるため第一歩であり、今後のカリキュラムの基礎にもなっていくものです」(天野園長)

 風の谷幼稚園のキーワードのひとつに“仲間”が挙げられる。“仲間”の存在こそが優しくしなやかで強い心を育てるとの信念があるからこそのキーワードである。次回は、この「大型どうぶつ作り」を通じた“仲間たち”の成長ドラマを詳細にご紹介していこう。

※次回の更新は、1月7日(木)を予定しております。

風の谷幼稚園
園長・天野優子氏が、理想の幼児教育を実現するためにゼロから建設に乗り出す。様々な困難を乗り越え、1998年に神奈川県川崎市麻生区に開園。「人間が人間らしく、誇りを持って生きていく」ための教育を実践している。

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