大人たちの導きがあって
子どもの心は育つ
では、「電車ごっこ」で、本当にそれが学べるのだろうか。答えはもちろん「Yes」だ。
前回の密着レポート第26回、および今回の冒頭のエピソードからもわかるように、「電車ごっこ」ではいろいろな役割がある。車掌、運転手、信号係、駅員さらには乗客…。そして、それぞれ子どもが各自の担った役割を適切に果たすからこそ、「電車ごっこ」は楽しい遊びとなる。
その過程において、「自分の出した指示で他人が動くこと」、「その指示が的確であれば全体がうまく動くし、悪ければ滞ること」などを体感値とともに学んでいく。自分の行為が他人に影響を及ぼし、逆に他人の行為で自分が影響を受ける「物的なつながり」を楽しみながら実感できる。教師がそのような意図をもって指導に取り組むならば、「電車ごっこ」は幼稚園児にとっては社会性を身につける格好の教材だ。
一方で、「心のつながり」はどのように教えていくのか。これについては、説明よりも現実をそのままお伝えするのが一番だろう。少し長くなるが、子どもたちが「心のつながり」を育んでいく様子を風2組学級通信「麦」から見てみよう。(以下、原文をそのまま掲載)
電車ごっこの後は、困ったことや問題点などを話し合ったり、みんなで決めたことを確認し合ったりする時間をとるようにしています。問題にぶつかったら、その問題を避けたり、そこで止めてしまったりするのではなく、その都度、考えていけばいいんだという意識と、自分たちの中で生じた問題は、自分たちで解決していける力をつけさせたい、と思っているからです。
そんな中、先週の電車ごっこ後の話し合いで、こんなことが起こりました。この日も、ああじゃないか、こうじゃないか、と話し合いの内容も濃く、時間も長くなっていました。
―他の人の考えについて萌ちゃんが、自分の考えを話している最中のこと―
凛 (歩希くんに向かって)「萌ちゃんなんて、いなくなればいいのにっ。長いよなぁ。もうお弁当食べたいよ・・・。太鼓もやりたいし・・・」(この日の午後は、太鼓をやることになっていました)
歩希 「・・・。」
先生 「なに? 凛くん、今、何て言ったの?」
凛 「・・・。」
先生 「何て言ったの? 萌ちゃんが話してる途中だったから、よくわからなかったの」
凛 「・・・。」
歩希 「萌ちゃんなんて、いなくなればいいって言った・・・」(うつむいたまま)
一瞬にして教室の空気が張り詰め、シーンと静まり返ると同時に、子どもたちの表情が一変。「えっ!? なんで?」と表情が言っています。私の表情もまた、同じだったと思います。そして、大城くんが口を開きました。
大城 (凛くんにむかって) 「仲間だよ。萌ちゃん、仲間だよ・・・」
萌 ―声を押し殺すようにして泣いている。
凛 ―今にも泣き出しそう―。
子どもたち 「仲間なのに・・・」
「そんなふうに言われたら、萌ちゃんどんな気持ちになるか、わかるでしょ」
(決して、凛くんに詰め寄ったり、声を荒立てたりするのではなく、諭すような口ぶりでした)