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目次・見どころ
特集
瀕死の林業
再生のカギは成長よりも持続性
「花粉症は多くの国民を悩ませ続けている社会問題(中略)国民に解決に向けた道筋を示したい」
岸田文雄首相は4月14日に行われた第1回花粉症に関する関係閣僚会議に出席し、こう述べた。スギの伐採加速化も掲げられ、安堵した読者もいたかもしれない。
だが、日本の林業(林政)はこうした政治発言に左右されてきた歴史と言っても過言ではない。
国は今、こう考えているようだ。
〈戦後に植林されたスギやヒノキの人工林は伐り時を迎えている。森林資源を活用すれば、林業は成長産業となり、その結果、森林の公益的機能も維持される〉
「林業の成長産業化」路線である。カーボンニュートラルの潮流がこれに拍車をかける。木材利用が推奨され、次々に高層木造建築の施工計画が立ち上がり、木材生産量や自給率など、統計上の数字は年々上昇・改善しているといえる。
だが、現場の捉え方は全く違う。
国が金科玉条のごとく「林業の成長産業化」路線を掲げた結果、市場では供給過多の状況が続き、木材価格の低下に歯止めがかからないからだ。その結果、森林所有者である山元には利益が還元されず、伐採跡地の再造林は3割しか進んでいない。今まさに、日本の林業は“瀕死”の状況にある。
これらを生み出している要因の一つとして、さまざまな形で支給される総額3000億円近くの補助金の活用方法についても今後再検討が必要だろう。補助金獲得が目的化するというモラルハザードが起こりやすいからだ。
さらに日本は、目先の「成長」を追い求めすぎるあまり、「持続可能な森林管理」の観点からも、世界的な潮流に逆行していると言わざるを得ない。まさに「木を見て森を見ず」の林政ではないか。
一方で、希望もある。現場を歩くと、森林所有者や森林組合、製材加工業者など、“現場発”の新たな取り組みを始める頼もしい改革者たちの存在があるからだ。
瀕死の林業、再生へ─。その処方箋を示そう。
PART 1 「森林・林業再生」の矛盾
再生した日本の森林を温存し“背伸びしない”林業を
中岡 茂 技術士(森林部門)、林野庁OB
PART 2 「林業の成長産業化」を疑う
木材自給率が倍増しても林業が絶望的であるのはなぜ?
田中淳夫 ジャーナリスト
Column 1
日本の森林・林業の基本
Interview 国の視点
課題山積の日本の林業 林野庁の見解とは
長﨑屋圭太 林野庁森林整備部計画課長
PART 3 林政の変遷
世界でも特異な日本の林政 政治決断で法制転換を図れ
泉 英二 国民森林会議 提言委員長、愛媛大学 名誉教授
Column 2
見れば納得 森林の世界 陣馬山から高尾山を歩く
PART 4 篤林家の“声”
変革期にこそ求められる 速水林業当主の揺るぎない信念
編集部
PART 5 未来への布石
日本材の国際競争力強化へ 攻めのインフラ整備を
編集部
PART 6 打開策はあるのか
「最適解」は一つではない 芽生え始めた希望の動き
田中淳夫 ジャーナリスト
PART 7 林業の出口戦略
持続こそ成長の源 “現場発”の変革目指す改革者たち
編集部
特集
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- 賃上げトレンドを持続させ 経済停滞を脱する足掛かりに
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- 医療機関情報を透明化し 血の通う医療DXの実現を
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伊藤由希子 津田塾大学総合政策学部 教授
井伊雅子 一橋大学大学院経済学研究科、国際・公共政策研究部 教授
- ■WEDGE_OPINION 3
- プレゼンスを高める豪州 日豪がインド太平洋の軸となれ
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佐竹知彦 青山学院大学国際政治経済学部国際政治学科 准教授
- ■WEDGE_REPORT 1
- 技能実習制度“廃止”の陰で取り残された「本質的な問題」
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出井康博 ジャーナリスト
- ■WEDGE_REPORT 2
- INTERVIEW
- 古川元法務大臣に聞く 外国人労働者問題の突破口
- ■WEDGE_REPORT 3
- リスキリングブームに沸く日本 経営者が持つべき視点
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編集部
連載
- MANGAの道は世界に通ず by 保手濱彰人
- 「ワンピース」は平成型ニューヒーローの代表格!
- 新しい原点回帰 by 磯山友幸
- 「ニッチ」を狙い挑戦続ける奈良宇陀の蔵元
- インテリジェンス・マインド by 小谷 賢
- 農耕民族の日本人にインテリジェンスは不向きなのか
- 近現代史ブックレビュー by 筒井清忠
- 『奈良に蒔かれた言葉2 近世・近代の思想』
- 1918⇌20XX 歴史は繰り返す by 家近亮子
- 「外交こそが戦争」と考えた中国大国化の立役者・蔣介石
- さらばリーマン by 溝口 敦
-
サラリーマン時代の教訓生かし見つけた独立の極意
吉田健太郎さん キャネットワークス代表社員
- 時代をひらく新刊ガイド by 稲泉 連
-
『名将前夜』長谷川晶一
- Letter 未来の日本へ by 河合香織
-
進むなら“ワイルドサイド”へ 新たな自分を発見しよう
櫻田謙悟 SOMPOホールディングス グループCEO会長、前・経済同友会代表幹事
- 各駅短歌 (穂村 弘)
- 一冊一会
- 拝啓オヤジ 相米周二
- 読者から/ウェッジから
2023年6月号
2023年5月20日発売
定価550円(税込)
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瀕死の林業
再生のカギは成長よりも持続性
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「花粉症は多くの国民を悩ませ続けている社会問題(中略)国民に解決に向けた道筋を示したい」
岸田文雄首相は4月14日に行われた第1回花粉症に関する関係閣僚会議に出席し、こう述べた。スギの伐採加速化も掲げられ、安堵した読者もいたかもしれない。
だが、日本の林業(林政)はこうした政治発言に左右されてきた歴史と言っても過言ではない。
国は今、こう考えているようだ。
〈戦後に植林されたスギやヒノキの人工林は伐り時を迎えている。森林資源を活用すれば、林業は成長産業となり、その結果、森林の公益的機能も維持される〉
「林業の成長産業化」路線である。カーボンニュートラルの潮流がこれに拍車をかける。木材利用が推奨され、次々に高層木造建築の施工計画が立ち上がり、木材生産量や自給率など、統計上の数字は年々上昇・改善しているといえる。
だが、現場の捉え方は全く違う。
国が金科玉条のごとく「林業の成長産業化」路線を掲げた結果、市場では供給過多の状況が続き、木材価格の低下に歯止めがかからないからだ。その結果、森林所有者である山元には利益が還元されず、伐採跡地の再造林は3割しか進んでいない。今まさに、日本の林業は“瀕死”の状況にある。
これらを生み出している要因の一つとして、さまざまな形で支給される総額3000億円近くの補助金の活用方法についても今後再検討が必要だろう。補助金獲得が目的化するというモラルハザードが起こりやすいからだ。
さらに日本は、目先の「成長」を追い求めすぎるあまり、「持続可能な森林管理」の観点からも、世界的な潮流に逆行していると言わざるを得ない。まさに「木を見て森を見ず」の林政ではないか。
一方で、希望もある。現場を歩くと、森林所有者や森林組合、製材加工業者など、“現場発”の新たな取り組みを始める頼もしい改革者たちの存在があるからだ。
瀕死の林業、再生へ─。その処方箋を示そう。