日本のパネルメーカー、ジャパンディスプレイ(JDI)と、ジェイ オーレッド(JOLED)は、追い詰められるところまで追い詰められてきた現実だ。JDIの液晶パネルは、海外メーカーの価格と量に、JOLEDの有機ELパネルは開発遅れでだ。
しかし、冷徹に意志を持ってビジネスを続けたこの2社にある意味、順風とはいかないまでも、自分たちが考えている方向へ風が吹き始めたのも事実だ。
JDIは提案型営業で
JDIは、産業革新機構の主導で、ソニー・東芝・日立のディスプレイ部門が統合されて誕生し、2012年4月1日に事業活動を開始した会社だ。この以前に、ソニーはエプソンと三洋の液晶部門、東芝はパナソニックの液晶部門と一緒なので、シャープ、三菱など欠けるメーカーがあるとはいえ、日本連合軍と言っても過言ではない。ただしファンドが政府系。経営判断は、経産省及び産業革新機構の承認が必要なため、機会を逃すことも多かったと言われている。
主戦場は、スマホ用の小型液晶パネル。スマホのパネルは、品質重視であるので、日本品質が武器になるが、現在のPC用ディスプレイパネル、TV用ディスプレイパネルは、価格軟化が著しく、日本価格では厳しい。また現在、スマホ液晶ではトップであるものの、サムソンの有機ELを入れた場合は、トップではなくなる。アップルのiPhoneが有機ELを採用したためだ。
ところで、一時飛ぶ鳥を落としまくっていたアップル社iPhoneの勢いが落ちていることにお気づきだろうか。スマホの先陣を切って各種特長を出してきたiPhoneもネタ切れになりつつあるのだ。逆な言い方をすると、新しさを出すことができれば、そのスマホがデファクトスタンダード化する可能性もある。
JDIは、ファーウェイに、サイズ変更の提案を行った。サイズといっても縦横比の変更、16:9のパネルから、18:9への変更だ。単純に言うと、同じ幅の場合、縦長のパネルになる。スマホはある意味、片手ホールドと画面サイズとの戦い。これまでは縦横比が、TVパネルと一緒だったので、画面サイズを大きくするときは、どうしても幅も拡げる必要があり、持ちにくくなっていた。縦横比を変えることにより、持ちやすさを維持しつつ、大画面化を可能にしたわけだ。
JDIの着眼点はよい。アイディアを出し、お客(スマホメーカー)の商品の魅力をアップ。代わりにオーダーをもらう形で進められたと言うが、ポイントは、B to B ビジネスは決して受け身だけではないということだ。
中国メーカーはオーダーされたものを作るが、同じオーダーで日本の場合は使えるモノを作ると評される。中小企業の場合によく言われることで、日本の「すり合わせ」と言われる。要するに、オーダーの意図まで理解した上で、双方「利」が出るように図るわけだ。これは日本が持ち続けてきた特質の一つであるが、余分なことはコストがかかるわけでそれをしない中国が好まれることもある。今回は、それが良い形で出てきたわけだ。また大きく変わるとされる自動車のコンソールパネルも狙っている。こちらはいままで数台並べていた液晶パネルの大画面及び曲面化で行われる。同一画面上だと、このようにユーザーが使いやすいようレイアウトしてある。今までの自動車にはない特長が出せる。
ただし、これは社の雰囲気がプラスに向かわないときはできないことも多い。今のJDIは構造改革が上手く働き、受け身のビジネスではなく、攻めのビジネスができているようだ。