有機ELパネルの生産技術
一方、12月5日、JOLEDは21.6インチの有機ELディスプレイの初出荷を発表した。世に初めて印刷方式、3原色独立発光のパネルを用いた有機ELディスプレイは、ソニーの関連会社に納入され、医療用システムの一端を担う。
有機ELと言えば、最近LGエレクトロニクスの動きが活発だ。増産を発表したり、クルマ用だが、デザイン性の高いランプ(主にはリアランプ)として提案している。できる限り多くの市場を拡げる考えだと思われる。2013年のパネルライン稼働後、4年が経過しており、投資回収の目処が必要な時期でもある。
現在、有機ELは「蒸着」技術で作られる。蒸着とは金属などを蒸発させて、素材の表面に付着させ、薄膜を形成する方法だが、金属を気体にする環境下が必要だ。主には「真空」が使われる。また、蒸着したくないところを「マスク」で覆う必要があるが、気体相手であるため、扱いやすいインクなどの液体より精度が求められる。
このため、スマホ用とテレビ用で有機ELパネルの生産技術は異なっている。
スマホ用は、「FMM-RGB蒸着法」と呼ばれ、光(テレビ)の三原色、「R(赤)」「G(緑)」「B(青)」を、それぞれ別々に蒸着し分ける。具体的には「R」用のマスク、「G」用のマスク、「B」用のマスクを載せ替え、3回蒸着する方法だ。蒸着は、気体分子が固化して薄膜を作らせるため、時間がかかる。その上、マスク3回載せ替えだと、位置合わせ技術(精度制御)も合わせ、スゴく時間がかかる。このため、設備投資、技術とも一流でないとできない。トップメーカーはサムソンだ。
国内だとソニーが蒸着に強い。ディスクの反射膜はもちろんのこと、昔はHI-8のビデオテープを蒸着で作り、「ME」(メタル・エボパレート(蒸着の意)の略)の名で商品化していた。バインダーなどの余分なモノを持たない蒸着テープは、単位面積当たりの出力を高くできるからだが、テープの様な広範囲を均一蒸着できるスゴい技術でもあった。
一方、テレビで採用されているのは、「白色EL蒸着法」。こちらはRGBが混ざった白色として出力される。具体的には、FMM-RGBはマスクを3回変えて位置を変化、横に、R、G、Bと並べていたのを、こちらは縦にR、G、Bと並べるので、必ず混ざった光、白色となる。このため、カラーフィルターを通し色づけしてやる。液晶パネルと大差がないようにみえると思う。バックライトがLEDと有機ELの違いだ。その通りだが、有機ELの場合は、応答に時間がかからないため、完全OFF=黒色描写に優れる。有機ELテレビの最大特徴でもある。
しかし問題がないわけではない。それはサイズ制限があり、多分野展開がし難いことだ。理想的には、三原色のあるFMM-RGB型で全てのサイズに対応することだが、精密マスクでの制御が、あるサイズ以上では難しいとされる。具体的には10インチ以上では使えないとされている。では白色蒸着法ではというと、カラーフィルターが必要なため、最薄ができない。つまりスマホのリクエスト条件にはそぐわない。