ジョージーナ・ラナード、エスメ・ストーラード(バクー)
アゼルバイジャンの首都バクーで開かれていた第29回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)は24日、途上国の気候変動対策のため、先進富裕国が2035年までに年間3000億ドル(約46兆1900億円)の支援を行うとの目標で合意した。これについて、途上国からは「あまりに不十分で手遅れ」との批判が上がった。COP29はこの日、閉幕した。
COP29は当初、11日から22日までの日程だったが、議論は33時間延長され、決裂寸前まで追い込まれた。
最終的な支援合意は、途上国が求めていた1兆3000億ドルを大きく下回るものとなった。アフリカの交渉官グループは最終的な誓約は「あまりに不十分で手遅れ」なものだと指摘。インドの代表者は「はした金」だと一蹴した。
ただ、2週間におよぶ交渉の中で、途上国が合意を妨げることはなかった。
より高額な資金援助の約束は、途上国が気候変動によって不均衡な負担を負っていること、そして途上国は歴史的に、先進国よりは気候変動に寄与していないことの確認となる。
国際連合枠組条約(UNFCC)のサイモン・スティル事務局長は今回の合意は完璧には程遠いものであることを認めた。
「望んでいたものすべてを手に入れた国は一つもない。我々はまだやるべきことが山積している状態でバクーを離れる」と声明で述べた。
貧困国の気候変動対策支援に関する合意は、現地時間24日午前3時に発表された。富裕国が2035年までに年間3000億ドルの支援をするのに加えて、2035年までに官民の財源から年間1兆3000億ドルを調達するよう取り組むことが盛り込まれている。
この合意が発表されると、会場は歓声と拍手に包まれた。しかしインドの代表者は演説で怒りをにじませ、強い不満が残っていることを示した。
「提案された金額はとてつもなく少額だ」とリーラ・ナンダン氏はCOP29で述べた。
小島嶼(しょ)国連合(AOSIS)のセドリック・シュスター議長も、「私たちの島々は海に沈みつつある。一体どうやって、私たちの国々の女性や男性、子供たちのもとに不十分な合意を持って帰れというのか」と述べた。
合意に至った支援金は、途上国が化石燃料から脱却し、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーに投資するのに役立てられることが期待されている。
また、気候変動に備えるための資金を3倍に増やす取り組みも、合意に含まれている。これまでは、気候変動対策に充てられた資金は全体の40%にとどまっている。
今年は各地が猛烈な熱波や致命的な暴風雨に見舞われており、記録的な暖冬となることが「ほぼ確実」となっている。
複数の気候保護慈善団体からは、今回の合意に批判が上がっている。
環境保護団体「グリーンピース」の代表ジャスパー・インヴェンター氏は、この合意は「ひどく不十分」で、「無謀な自然破壊者」が「気候変動対策への野心が乏しいあらゆる国の政府」によって守られていると述べた。
世界各地の水の供給や衛生などの支援を行う団体「ウォーターエイド」は、COP29の合意は「何百万もの人々に対する死刑宣告」だとしている。
環境保護団体「エクステンション・リベリオン」のスポークスパーソンは、COP29は「失敗に終わった」と指摘した。
別の環境保護団体「フレンズ・オブ・ジ・アース」の政策責任者マイク・チャイルズ氏は、気候変動対策におけるリーダーシップという点では、地球は依然として、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで昨年開かれたCOP28の時からまだ「何光年も離れている」と述べた。
「今回の国際的協議では、気候変動対策資金の問題を解決できなかった」と、チャイルズ氏は述べた。
「その代わりに、彼らは再び問題への対応を先送りにした」
COP29の初日には主に、アメリカのドナルド・トランプ次期大統領が話題となった。
トランプ次期大統領は気候変動に懐疑的で、気候変動への国際的な取り組みを決めた2015年の「パリ協定」からアメリカを再び離脱させるとしている。
英ケンブリッジ大学教授で、気候変動をめぐる国際交渉の専門家ジョアンナ・デポレッジ氏は、「支援を行うほかの先進国はトランプ氏が1ペニーも支払わないであろうこと、その不足分を自分たちで埋め合わせなければならなくなることを強く認識している」とBBCに述べた。
今回の合意に達したことは、各国が依然として気候変動対策で協力しようと取り組んでいることの表れだ。しかし、地球上で最大の経済大国がその一端を担う可能性が低くなった今、数十億ドル規模の目標を達成するのはより難しくなるだろう。
「COP29が最終盤が長引いたことは、世界が置かれている地政学的な厳しい状況を反映している。それがもたらしたのは、支援国と世界で最もぜい弱な国々との間の、不完全な妥協だ」と、シンクタンク「アジア・ソサイエティ政策研究所」の李碩氏は述べた。
イギリスのエド・ミリバンド、エネルギー安全保障・ネットゼロ相は、COP29での新たな誓約は、イギリスに気候変動対策資金のさらなる調達を委ねるものではないとし、実際にはほかの市場に投資する「英企業にとって大きなチャンス」になると強調した。
「これ(合意)は私たちやほかの人々が望んでいたすべてではないが、私たち全員にとっての一歩前進だ」とミリバンド氏は述べた。
イギリスや欧州連合(EU)諸国を含む先進国は、さらなる拠出を約束する見返りとして、各国が化石燃料の使用を削減する取り組みを強化することを求めていた。
これらの国々は、昨年ドバイで合意された「化石燃料からの脱却」が強化されることを期待していたが、COP29での最終合意案はCOP28での合意内容を繰り返しただけだった。
石油やガスの輸出に依存する国々は、これ以上取り組みが強化されないよう、交渉の場で強く抵抗したと報じられている。
「アラブ諸国グループは化石燃料を含む特定のセクターを対象とするいかなる文書も受け入れない」と、サウジアラビアのアルバラ・タウフィク氏は先週初めに公開された会議で述べていた。
いくつかの国は、自国での新たな気候変動対策を用意してCOP29に臨んだ。
イギリスのキア・スターマー首相は、この国際舞台で気候変動対策におけるリーダーシップを発揮しようとした。イギリスの温室効果ガス排出量を2035年までに81%削減することを約束すると、野心的な目標だとして多くの国から称賛された。
開催国アゼルバイジャンをめぐっては、気候変動対策を協議する場にふさわしいかどうか議論が起きた。同国は今後10年間でガス生産を最大3分の1拡大したいとしているためだ。
来年のCOP30の開催地のブラジル北部パラ州ベレンは、より適した場所だとみられている。ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領が、気候変動対策や、世界的に重要なアマゾンの熱帯雨林での森林伐採を減少させることに精力的に取り組んでいるからだ。
(英語記事 Huge COP29 climate deal too little too late, poorer nations say)