サイズ問わずとの宣言がなされた印刷型有機EL
印刷方式は蒸着と異なり、印刷版に印刷インキなどを塗り、紙などの被印刷物(支持体)に押しつけ、機械的に複製するのを基本とするが、インクジェットのようにインクを吹き付け支持体に載せる方法もある。いずれにせよ、印刷の特長は、高速で複製がいくらでも作れることだ。欠点は、印刷条件を満たす素材を開発することだ。これがなかなか大変。そう簡単には行かない。安定して印刷するには、人、金をつぎ込んだとしても、かなりの開発時間がかかるのが通例だ。
2014年、印刷で技術開発をしてきたパナソニックと、蒸着で技術を開発をしてきたソニーが一緒になってできたJOLEDが選んだのは「印刷」だった。開発スピードを取るなら、「蒸着」だったことは想像に難くないが、JOLEDが採用した技術は「印刷」。
そして2017年5月。できたパネルは、4Kの中型パネル。この時のコメントは、大きなパネルは、短期で技術開発できる。しかし、スマホサイズは開発時間がかかる。未確定ということだった。
しかし、12月5日の発表では、全サイズを同じ技術でできるという。スマホサイズの目処が付いたらしいのだ。これは大きな話だ。
実は、今の液晶全盛の背景の一つが、スマホもテレビの液晶技術も基本同じ生産方法であるということだ。液晶は、パネルサイズによりラインの世代が決まるが、どの世代のラインは液晶を知っている技術屋は、基本使えるということだ。
しかし、有機ELの場合、有機ELのスマホ技術者が、テレビのラインを任された場合、土地勘はあるにせよ、技術を学ばないといけない。またラインも独立だ。しかも蒸着は気化した金属を真空槽の中にとどめなければならない。このためサイズを決められてしまうのだ。蒸着系は非常に導入しにくく、変更し難い技術でもある。
しかし、印刷型にはこのよう制限がないとなると、非常に大きなアドバンテージとなる。これは大きい。これは有機ELのポテンシャルを大きく進めることになる。というのは、有機ELの支持体はガラスではない。樹脂だ。クルマメーカーが興味を示すように、いろいろな形も可能だ。端まで見えなくてもイイとすると、円形のテレビでも作ることができる。印刷方式なら、支持体の形状と、それに合わせた版を用意すればできるのだ。多少他の制限が付くとしても、液晶パネルに対し、コスト競争力がでる可能性は十分ある。
有機ELの開発は、ベストのタイミングでは遅れた。しかし、JOLEDが「印刷型」有機ELをモノにしたことで、まだキャッチアップの可能性は残されているのだ。
JDIは新しい提案で、JOLEDは技術を完成させ、勢いがではじめた。しかし、中国液晶の壁は分厚い。日本の力量が問われるのはこれからだ。
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