ラオス中部の外国人旅行者に人気の町で、同じ宿に泊まっていたデンマークやイギリスなどからの旅行者6人が今月中旬以降、飲酒後に相次ぎ死亡した。メタノール中毒とみられ、当局が捜査を進めている。
旅行者らが死亡したのは、首都ヴィエンチャンからバスで北に4時間ほどの町ヴァンヴィエン。かつては水田が広がる活気に乏しい町だったが、近年はタイと中国からの資本でしゃれたホテルが次々と建てられ、川沿いにカクテルバーなどが並んでいる。
この町にある「ナナ・バックパッカーズ・ホステル」に泊まっていたデンマーク人女性2人と、アメリカ人男性、オーストラリア人女性2人、イギリス人女性1人の計6人が今月中旬以降、次々と死亡した。
これらの旅行者は、メタノールが含まれていたアルコール飲料を飲んだ可能性があるとみられている。
現地の行政トップ、ブンチャン・マラヴォン氏は、このホステルを訪問。施設を閉鎖して捜査を進め、責任者を裁判にかけることを約束した。
現地メディアによると、デンマーク人のアンネ=ソフィ・オルキルド・コイマンさん(20)とフレヤ・ヴェンネルヴァルド・ソレンセンさん(21)は今月12日夜にバーに出かけた後、13日に「ナナ・バックパッカーズ・ホステル」の部屋で意識不明の状態で発見された。ヴィエンチャンの病院に搬送されたが、夜間に死亡。死因は急性心不全とされた。
アメリカ人のジェイムズ・ルイス・ハトソンさん(57)も13日、同ホステルの部屋のベッドで死んでいるのが発見された。部屋から出てこないことから、スタッフが様子を見に行った。近くには空のグラスがいくつかあった。体にあざや傷はなかったとされる。
オーストラリア人のビアンカ・ジョーンズさんとホリー・ボウルズさん(共に19)は、今月12日にヴァンヴィエンに到着。同ホステルにチェックインした。
その数日後、2人はタイの病院で生命維持装置につながれた。そして21日にジョーンズさんの死亡が、翌22日にはボウルズさんの死亡が、それぞれ発表された。
イギリス人女性のシモーン・ホワイトさん(28)の死亡も21日に発表された。ホワイトさんは弁護士で、友人らとグループで旅行中だったとされる。
当局のこれまでの捜査は、同ホステルに焦点が当てられている。この宿では到着した宿泊者に、無料でアルコール飲料をふるまうことがよくあったとされる。デンマーク人女性2人はそれを飲んでから、夜の町に出たという。
ホステルのマネジャーは過失責任を否定している。12日夜には少なくとも100人の客に同じ飲み物を提供したが、死亡した人たち以外は何の問題もなかったとしている。このマネジャーは21日、事情聴取のため警察に連行された。
メタノールは毒性があり、専門家によると、25ミリリットル程度の摂取で死に至る場合もある。アルコールより安価なため、密造酒に含まれたり、飲み物に混ぜられたりすることもある。
オーストラリア人のボウルズさんの家族に代わってメディアの取材に応じたニック・ヒースさんによると、ボウルズさんの体調悪化の原因はメタノールだと分かっているが、「どこでどうやって体内に入ったのかはよく分かっていない」という。
外交官らや旅行業界関係者たちの間では、パーティーが盛んなヴァンヴィエンでメタノール中毒の危険性があることは知られてきた。ただ、旅行者の多くはそうしたことは知らないとみられる。
東南アジアはメタノール中毒が最も多く発生する地域とされる。安価なアルコールを製造する現地生産者は、その過程で生成されるメタノールの毒性レベルを適正に低減させないことが多い。
国境なき医師団(MSF)によると、東南アジアでは毎年、数千件のメタノール関連の事故が記録されているという。
(英語記事 Three more tourists named in Laos methanol deaths/'Don't drink the spirits': Laos backpackers avoid shots after suspected poisonings/Sixth foreign tourist dies of suspected methanol poisoning in Laos/Free shots and beer buckets in party town at centre of suspected methanol deaths