情念や狂気を描き出した「花がたみ」、静かな外観の中に深い精神性をたたえた「鼓〔つづみ〕の音〔ね〕」……。上村松園〔うえむらしょうえん〕の描く美人画は、単に美しいだけでなく、女性のもつ気品と深い内面性が、京の人々の風俗や、古典文学、謡曲などの題材にのせて表わされていることで評価が高い。
松伯美術館所蔵
そんな美人画の巨匠、上村松園の展覧会が、上村家三代のコレクションで知られる松伯〔しょうはく〕美術館(奈良市)の協力のもと、千葉県佐倉市の川村記念美術館で開催される。展示されるのは、色鮮やかな本画など7点に加え、下絵・素描約40点(予定)と、画筆など松園が愛用した身の回りの品々だ。
松園は、いわゆるポーズをとるようなモデルを用いなかったが、自ら和紙をこよりで綴じて作った縮図帳を持ち歩き、古画の模写はもとより、人物の姿や表情、草木などを細やかにスケッチした。また、制作に際しては素描がなされたが、そこには、櫛やかんざし、能面などを見つめる画家のまなざしや、人物を写す際の生き生きとした筆致などを読み取ることができる。
狂女や生霊を描いても、松園の作品にはなぜか清澄さや気品が漂う。作家の意図が直接に表わされた素描や下絵と見比べることで、その秘密に触れることができるのではないだろうか。
上村松園 素描、下絵と本画
〈開催日〉2011年2月15日~3月27日
〈会場〉千葉県佐倉市・川村記念美術館(総武線佐倉駅からバス)
〈問〉0120(498)130
http://kawamura-museum.dic.co.jp/calendar/index.html
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