写真提供:犬山保存会
愛知県北西部に位置する犬山市。川下りや鵜飼で有名な木曽川が街の中心を流れ、国宝の天守を擁する犬山城が川面に映える。
毎年、桜が満開となる時期、その犬山城の麓の針綱〔はりつな〕神社で行われるのが、国の重要無形民俗文化財に指定されている犬山祭だ。
三層の絢爛豪華な車山〔やま〕(山車〔だし〕のこと)が13輌繰り出し、笛・太鼓にあわせて人形からくりを奉納する。また、夜になると各車山に365個もの提灯が灯され、桜並木がつづく本町通りを練り歩く。まさに錦絵を見るような艶やかさだ。
「祭りの見どころはたくさんありますが、ぜひ見てほしいのは人形からくりです。何しろ、犬山祭は日本屈指のからくり祭りなんですから」
と話すのは、犬山祭保存会事務局長の溝口正成〔まさなり〕さん。からくり人形といえば岐阜県の高山祭を思い浮かべるが、実は愛知県が全国一のからくり人形保有県。県内にある約400輌の車山のうち、およそ半数にからくり人形が搭載されているとか。なかでも犬山祭は、13輌すべての車山に異なるタイプのからくり人形がのっており、一度にすべて見られるのが魅力だ。
ちなみに、からくり人形とは木製の歯車や鯨のヒゲで作ったバネなどを使って動く人形。いわば江戸時代のロボットだ。からくりの種類としては、唐子〔からこ。中国風の衣装や髪形をした子供の人形〕が高さの違う杭の上を渡って行く「乱杭〔らんぐい〕渡り」や、人形が鉄棒の大車輪のような回転技を見せる「應合子〔おうごうし〕」といった“離れからくり”、浦島太郎が一瞬のうちに翁に早変わりする“変身・変面からくり”などがある。
「犬山のからくり人形はすべて江戸時代のもので、30年以上の経験を持つ人形方〔にんぎょうかた〕5~8人によって操られます。糸も見えないし、どうやって操作しているんだろうと皆さん不思議がられますよ。特に、曲芸のような“離れからくり”はまわりから大喝采が起こります」
町の豊かな経済力を背景に、江戸時代の人形師たちが知恵と技と情熱を結集して創り上げたからくりの技。その華麗さ、多彩さを存分に楽しんでみたい。
犬山祭
〈開催日〉2011年4月2・3日
〈会場〉愛知県犬山市・針綱神社ほか(名鉄犬山線犬山駅下車)
〈問〉犬山観光案内所 0568(61)6000
http://inuyama.gr.jp/festival
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