軍用機で横田基地へ降り立った
Q で、着陸したのは米軍横田基地でした。米軍の飛行場に下りるということは、今までにもあったことですか。
A 前にハワイでも米軍基地に着陸したことがあります。日本についたのは3月14日、月曜未明の時刻で、隊員全員、さあこれからと張り切っていました。とはいえ着陸後に米軍の施設で何時間か睡眠をとれたのは良かったですね。その後で出た朝食がまた大盛りで。大きいといえば(横田)基地の規模にも度肝を抜きました。
Q その後のことは?
A 3月15日火曜のマルマルマルマル(午前0時0分)、横田基地を出発しました。基地に残ったのは4人からなるタスクフォースの偵察チームです。活動エリア上空を飛ぶヘリを待つためでした。
ところが飛び立ったヘリは、悪天候のため途中の福島空港に降りざるをえませんでした。4人のうち2人は、そこから(南三陸近くの)活動基地(BOO: Base of Operations)まで地元のタクシーで向かったんです。残り2人は横田基地へ逆戻りし、1人は都内のオーストラリア大使館で連絡係として働くことにし、あと1人はなんとかかとか、あとからBOOへ辿り着きました。
Q 持ってきた設備と機械のことを少し。犬も2頭連れてきたそうですが、犬種などは。どんな能力のある犬だったのでしょう。
A まず犬ですが、生存者を嗅ぎ出して見つける能力をもっています。2頭とも雑種です。
装備として持参したのは、都市型災害が起きたとき埋もれた人を探し出して救助するための一式です。
コンクリートを切断する機械ですとか、大きな竪穴を開ける道具、大型の水撃ポンプと水圧噴射機、奥まで差し込めるカメラですとか音源センサー、これは人間の生体反応を聞き取るもので、コンクリートの下何メートルというところにいる人の心音をつかまえることができるものですが、そういうもの。
それから医薬品、輸液、人工呼吸器、AED(除細動機)で構成する医療用のキット一式ですね。これには医師が2名と、救急医療士8名、それに医療技術者2名も一緒です。
毒性が強い物質(ハズマット、hazmat)を扱うこともありますから、それ専門の技術者が9名と、放射能検出装置、司令部要員の消防士が8名に、ロジ専門の要員が3名と、通信担当が4名、そしてUSARを受け持つ消防士が40名です。
(総勢76名の)このチームで、10日間は自立活動ができるようになっています。そのため自家発電設備と糧食、水、もちろんテントやトイレの設備ももっていきました。
Q 76名というのはいつものサイズですか。
A そうです。これで10日間活動し、まだ必要なら新しいチームとそっくり入れ替わる、そういう方式です。
Q 放射能検知器を持ち込んだということですが、専門家もいたのですか。
A 9名からなるハズマット担当要員は専門の訓練を受けていて、放射能が高いところでも行動できるようになっています。
加えて、オーストラリアにいるその方面の科学者や、政府の放射能防護原子力安全局(Australian Radiation Protection And Nuclear Safety Authority: ARPANSA)にいる放射能の専門家と連絡が取れる態勢にしていました。
わたし自身、実はハズマット担当部隊の隊長を4年務めたことがあって、ニューサウスウェールズ州から救援隊が出動し出先で放射能にさらされたときどうするかについて、何年かかけて方針をつくった経歴をもっているんです。おかげで、今回の派遣期間中も、アドバイスを求めることができる専門家たちのネットワークに事欠きませんでした。
⇒次ページ 大使館スタッフの働きぶり