『限界マンション』(日本経済新聞出版社)を上梓するなど、住宅事情に詳しい富士通総研経済研究所の米山秀隆・主席研究員に聞いた。
値上がりが続いている首都圏のマンション価格について米山氏はこう指摘する。
「首都圏の新築マンションの価格は6000万円台にまで値上がりしており、普通のサラリーマンが買いたくても買えない水準になっている。中古住宅の売れ行きが昨年と一昨年で新築を上回っているのがその証拠で、中古は新築を買えない層が買っている。マンションの価格はオリンピックの前にピークアウトするのではないか」
その上で、こう強調する。
「現在、600万戸以上にまで増加したマンションの老朽化と、同時に居住者の高齢化や空室化が進んで管理が行き届かなくなり、スラム化した『限界マンション』が大量に出ることが予想される。多くの建物では建て替えや再開発ができず、解体費用も捻出できないため、そのまま放置される可能性が高くなる」
マンションに関しては、大手ゼネコンは建設して販売すれば購入代金が入ってくるため、効率の良いビジネスだった。購入者側も、マンション購入により家を持ちたいという夢が叶うことで安心してしまい、購入後のことなどあまり考えていなかった。しかし、今後は購入してから死ぬまでの住宅プランをしっかり立てておかないと、最悪の場合、住む場所を失うことにもなりかねないと訴えているのが米山氏だ。
国土交通省によると、2017年末のマンションストック総数は644万1000戸で、居住人口は1533万人と推計され、国民の約1割に当たる。現在、築40年以上のマンションは72万9000戸あり、全体に占める割合は約1割だが、10年後には2.5倍の184万9000戸、20年後には約5倍の351万9000戸と見込んでおり、老朽化は急速に進むとみている。
米山氏はマンションの建て替えについて、
「容積率に余裕があって、以前よりも多くの部屋を造ることができ、その売却益を見込めなければ、デベロッパーの協力は得られない」
と指摘する。米山氏が行った試算では1.6~2.8倍程度の容積率割り増さなければ、採算が合わないとの結果が出たという。