2024年7月16日(火)

前向きに読み解く経済の裏側

2018年9月18日

退職金は会社に預けてある定期預金である

 退職金というと、退職日に会社から支給される「御苦労様でした」という褒美だと思っている人が多いようですが、ここは発想を変えましょう。退職金は、「本来であれば毎月の給料として受け取れていたはずの金額の一部を、会社が無理やり定期預金させていたものが、退職日に満期を迎えて払い戻された」ものだと考えましょう。それによって良いことが二つあります。

 一つは、退職前から大胆に株等に投資することができる、ということです。退職前の金融資産が500万円だとして、その2割を株にすると、100万円です。しかし、100万円しか株を持っていないと、退職日に1500万円の退職金を受け取り、金融資産が2000万円に増えた時に、金融資産の95%は現金でわずか5%が株だ、ということになってしまいます。これではインフレが来た時に困ります。かといって、退職日に大量の株を購入するのは上記のように危険です。

 しかし、退職前に「自分の金融資産は、銀行の定期預金500万円と会社への定期預金1500万円の合計2000万円である。そのうち2割である400万円を株にしよう」と考えておけば良いのです。退職直前には実際の金融資産500万円のうち400万円が株になっていますが、不安に思う必要はありません。

 退職金が会社への定期預金だと考えることの今ひとつのメリットは、持ち慣れない大金を手にした時に気持ちが舞い上がらずに済む事です。「自分は2000万円の金融資産を持っているのだ。会社への定期預金が満期になったら、何をしようかな」「銀行の支店長が投信や保険を勧めて来たらどうしようかな」と考えながら退職日を迎えれば良いのです。

 そうすれば、退職金が出て銀行の支店長室に通されても、落ち着いて対応できるでしょう。また、「大金が手に入ったから、夫婦で世界一周旅行へ行こう」と考えずに「老後のための最後の砦だから大切にしよう」と思えるかもしれません。

 もちろん、老後資金の事を冷静に考えても、なお「これまで苦労をかけてきた妻への感謝の気持ちを込めて、妻が行きたがっている世界一周旅行へ行こう」という結論ならば、それはそれで素晴らしいことですが。

  
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