2024年12月21日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年1月4日

「革命・民主・自由」語った中国の若手人気作家

 改革派知識人の多くは、烏坎事件に社会変化の予兆を感じたのは事実だが、広東省の村から起こった「革命」が中国社会をそう簡単に変えることはあり得ない。

 ただ烏坎事件が社会を騒がせていた最中、「中国と革命」という古くから議論されてきた敏感なテーマに挑んだのが、痛烈な社会批判で人気を博す人気若手作家・韓寒氏(29)だったことから、この2つの問題はネット上で大きな話題になった。

 韓はまず、クリスマスイブ前夜の12月23日、「談革命」(革命を語ろう)と題する文章を自身のブログに掲載。「革命というのは、中国にとって必ずしもいい選択ではない」と結論づける韓はこういう刺激的な言葉を並べた。

「世界で最も革命があり得ない国家」

 「あなたがiPhoneを持ち、バイクに乗り、ネットを楽しみ、新聞を日々読み、ケンタッキーを食べていても金持ちと見られる。原罪を負った者とみなされて革命が起きれば、打倒の対象となるだろう」

 「いかなる革命にも時間が必要。中国ほど巨大な国家では天下大乱、軍閥割拠、権力真空とならなくても、わずか5年~10年も混乱すれば、民衆は鉄腕独裁者の登場をきっと期待するようになるだろう。社会秩序を取り戻し、局面を収拾するためにだ」

 「最もカギとなるのは、多くの中国人は他人の死にモノ言わないのに、自分の身に損が及ぶようなことになるとワアワアと叫ぶ習性を持つこと。これでは一生かかっても団結できない」

 「そうでなければこう。白か黒か。正しいか正しくないか。共産党を批判しないと五毛党(五毛=0.5元=の報酬で共産党・政府寄りのコメントをネットに書き込むネット評論員)になる社会で、横暴に革命を起こしたら、この上なく危ないことになってしまう。多くの人は、中国の緊急の問題こそ選挙で主席を選ぶことと考えているが、実際には喫緊ではないでしょう」

 「現在の中国は世界で最も革命があり得ない国家だが、同時に世界で最も改革が必要な国家である。もしあなたが中国でいつになったら革命の好機が到来するか僕に尋ねるなら、僕が言えることはただ一つしかない。車を運転して対向車とすれ違う際、ハイビーム(上向きライト)をオフにできるような社会になれば、安心して革命ができるだろう。しかしそんな国になったら、革命など必要なくなる。民度と教育水準が一定に達したら、すべては自然にしかるべき方向に向かうだろう」

失望や反論が相次いだ韓の発言

 韓は続けて24日に「説民主」(民主を話そう)を発信。「共産党は現在8000万党員と3億人に上る親族がいる。これを一つの党派・階層とは簡単にみなせない。これだけ強大な党になれば、党が人民や体制そのものになる」と論じた。

 ネット上では、「自由の騎手」と呼ばれてこれまで痛烈な社会批判で影響力を誇った韓寒の発言に失望や反論が相次いだのは言うまでもない。

 特に有名な芸術家で人権活動家の艾未未氏は韓寒の文章を「非常に低俗で新味のない調子」「こびへつらう論断」と切り捨て、「環球時報に採用されるのにふさわしい」と皮肉った。

「党すなわち人民」 韓の主張に喜んだ人民日報系紙

 共産党機関紙・人民日報系で、民族的論調で知られる国際情報紙「環球時報」について艾未未が言及したのには背景がある。同紙の胡錫進編集長は韓寒の見解を絶賛、自身のミニブログ「微博」で「党が人民そのものというのは、中国ではめったに聞けない本当の話だ」と評価し、さらに26日付の環球時報の社説にも同様の意見を掲載していたからだ。

 環球時報は27日付にも「韓寒はさなぎからチョウになった」と韓の成長を喜び、「中国の30年間の発展は、『左』や『右』の二元対立を明らかに超越している」との論調を掲げた。その上で「中国の変革と発展は、ただ自分のやり方や歩調で進み、チュニジアやリビアにも変わらないし、イラクやアフガニスタンにもなり得ない」と訴えた。


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