民主党政権は、規制で雇用を守ることに熱心である。
もちろん、ねじれ国会の中で実現するかどうかまったく分からないのだが、政府は、新たな労働契約法を成立させ、同じ職場で5年を超えて働く有期契約のパートや派遣社員に対して契約期間を限定しない「無期雇用」に転換することを義務付けようとしているようだ。
具体的には、現在の労働基準法は有期雇用について、1回の契約で働ける年数を原則3年以内と定めているが、契約更新を重ねた場合の上限規定はない。これを、有期雇用の通算期間の上限を5年と設定し、通算期間がこれを超えれば、労働者の申し出により、企業は同じ労働条件で無期雇用への転換を認めなければならないという案である(産経新聞2012年2月8日による)。
雇用保護を強めれば
失業率が上がる
何が正規雇用かというのは、分かりにくいのだが、契約期間を限定しない雇用を正規雇用としている。契約期間を限定すれば、期間が終わった後にはいつでも解雇できるが、限定しなければ解雇が難しくなるので正規雇用だとなる。
しかし、規制で無理やり雇用を守ったとしても、企業には雇用しないという選択肢がある。契約更新をしなければ、雇用が減るだけである。企業には、例えば、3年であれば雇用したいが、それ以上であれば雇用したくないという需要がある。それを禁じれば、3年であれば雇用したいという雇用需要すらもなくなってしまう可能性がある。
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可能性ではなくて、実際にそうであることを示唆するデータがある。図はOECDのデータから、2008年における雇用保護規制の強さと失業率の関係を見たものである。縦軸が失業率、横軸が解雇制限などの雇用保護規制の強さである。図から明らかなように、雇用保護規制が強いほど失業率が高いという関係がある。
雇用保護とは結局、現在雇われている雇用者を保護するだけになる。すると、新しい雇用は生まれにくくなるので、失業率が高くなる訳である。
もちろん、失業率は規制だけで決まる訳ではない。成長し、景気が良ければ失業率は低下する。日本の雇用保護規制は現在までで強化された訳ではないが、失業率は08年から上昇して一時は5.4%まで高まった。09年以来不況が続いたからだ(直近は、4%台半ば)。
雇用の安定と
生活の安定は別に考えよ
では、どうしたら良いのだろうか。非正規雇用は不安だし、規制で非正規を正規にすると失業率の上昇という副作用がある。新自由主義者と言われる経済学者の答えは以下のようなものである。