2024年12月23日(月)

J-POWER(電源開発)

2020年2月20日

PR
 

 

 

 

 

「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」。国連SDGsの達成に向けて電力の安定供給と低炭素化に挑むJパワー。その先には、やがて迎えるCO2フリー時代と持続可能な社会をクリーンコール技術で結ぶロードマップが描かれている。

石炭から次世代エネを
世界初の水素サプライ構想

NEDO課題設定型産業技術開発費助成事業(2015-2020年度〈予定〉) 「未利用褐炭由来水素大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業」 資料提供:HySTRA(一部豪州補助事業)

 水素はマイナス253度で気体から液体へと変わり、体積が約800分の1に圧縮される。この状態で海上を輸送する世界初の液化水素運搬船が昨年12月11日、川崎重工業神戸工場で進水式を迎えた。

 この「すいそ ふろんてぃあ」号が竣工するのは今年秋頃の見込み。水素エネルギーの国際サプライチェーン構築を目指す実証プロジェクトに投入され、豪州で製造された水素を神戸まで運ぶ試験に使われる。

 その水素製造の要となるのが、意外にも石炭である。温室効果ガスを出さずに発電や燃料電池に活用できる水素は次世代のクリーンエネルギ ーとして期待され、政府も温暖化防止の切り札と位置づける。だが、水素は自然界にほとんど存在しないため、化石燃料から精製するなどの製造工程を要するのだ。そのコストは高く、国内量産への道程は険しい。

 そこで、未利用のまま豪州に多く眠る褐炭を使ってこの問題を解消し、水素の製造から輸送、荷役、貯蔵に至る一連のスキームと技術を確立しようというのが、この実証事業の狙いである。Jパワー(電源開発)のほか、川崎重工、岩谷産業、シェルジャパンなどによる技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)が参画し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が助成する。

 日本で運搬船や貯蔵施設の建造が進む一方、豪州では水素製造の準備を急ぐ。折しも11月7日、Jパワーが担当する褐炭ガス化・水素精製設備建設の定礎式が、ビクトリア州ラトロブバレーで行われた。水分を多く含み輸送に適さない褐炭は利用先が限定される。だが、ここには日本の総発電量240年分といわれる膨大な埋蔵量がある。これを活かし、Jパワーが持つ石炭ガス化の先端技術で褐炭から可燃性ガスを発生させ、そこから水素だけを取り出すのだ。

 「建設工事はまさに佳境。2020年上期には試運転に入ります。未利用資源を有効活用してクリーンな次世代エネルギーを生み出す意義は大きく、現地の産業振興や雇用拡大にもつながるため、豪州関係者の期待の高さも感じます」。プロジェクトマネージャーを務めるJパワー技術開発部の桝山直人氏はそう話す。

クリーンコール技術で開く
「ゼロエミ」時代の扉

J-POWERが担当する褐炭ガス化・水素精製設備の完成予想図

 桝山氏によれば、水素の製造過程で生じるCO2を最小限に抑えることも視野に据え、豪州側と協議を進めているという。石炭の排ガスからCO2を分離・回収し、大深度地下に埋め戻す「CCS技術」の実践だ。ラトロブバレー沖合の古い海底油田の採掘跡が、貯留地候補と目される。

 JパワーはこのCO2分離・回収技術でも先端を走る。広島県大崎上島町では中国電力と共同で、石炭ガス化による世界最高水準の高効率発電にCO2分離・回収を組み込む「大崎クールジェンプロジェクト」を展開中(NEDO助成事業)。すでに試験設備が完成し、実証段階にある。

 さらに、回収したCO2を資源として再利用する「カーボンリサイクル」の試みにも着手。Jパワーとカゴメが共同運営するトマト菜園での生育促進や、微細藻類からバイオ燃料を生産するための人工光合成など、さまざまな分野でCO2を使うことを想定した検討に入った。商用化を果たせば、CO2をほとんど排出しない世界初のゼロエミッション型の石炭火力発電も夢ではない。それは日本がパリ協定で約束した、低炭素社会実現への道筋の一つでもある。

 エネルギーの安定供給に貧困や飢餓の撲滅、気候変動対策と低炭素化。SDGsが掲げるこれらの目標を達成するには、多角的なアプローチが不可欠だ。経済発展を支える安価で安定した電力供給のために、化石燃料に頼らざるを得ない地域はまだ多い。資源に乏しい日本のように、複数のエネルギー資源の確保が死活問題となる国もある。その求めに応え、同時にゼロエミッションにも挑む。Jパワーの進む道がそこにある。

エネルギー安定供給に向けた
J-POWERの取り組み

 J-POWER(電源開発株式会社)は1952年、戦後の電力不足解消を目的に発足した。現在では国内約100カ所に水力・火力・風力・地熱等の各種発電所と亘長約2400kmの送電線を保有。石炭火力の低炭素化に向けた技術開発に取り組むほか、国内第2位のシェアを占める水力発電や風力発電を中心に再生可能エネルギーの拡大にも努める。また、世界64カ国・地域で海外コンサルティング・発電事業を展開している。

●水力発電所 60カ所 856.0万kW
●火力発電所 11カ所 819.5万kW
●風力発電所 24カ所 53.1万kW
●地熱発電所 1カ所 2.3万kW
(2020年1月末現在 持分出力ベース)

CCS(CO2回収・貯留)の推進

 火力発電所で発生する排ガスからCO2だけを分離・回収し、そのままパイプラインで地下深くに送って封じ込める方法。J-POWERは北海道苫小牧市で進むCCS技術の大規模実証事業にも参画している。

カーボンリサイクルへの挑戦

 J-POWERは脱炭素化の一環として、発電所の排ガスから回収したCO2を資源として有効利用する技術の開発にも取り組む。化学製品や燃料、鉱物、植物の育成促進など、さまざまな用途での活用が検討されている。